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【コラム】金子達仁

最速開幕Jから目が離せない

[ 2017年3月2日 19:35 ]

 王者・鹿島の黒星発進に浦和のよもやの逆転負け。さらにはリーグの枠組みを大きく変えるであろうダ・ゾーンの参入といきなりの中継トラブル。実に盛りだくさんというか、いつになく話題に満ちた今年のJリーグ開幕節だった。

 ただ、個人的に一番大きな意味を持っているのでは、と思ったのはカズが50歳の誕生日にプレーした、という事実である。

 日本に限らず、世界中のメディアがこのニュースを取り上げたことからもわかるように、50歳になってもプロとしてプレーを続けるのは、おそらく、わたしたちが生きているうちには二度と目撃できないであろう、歴史的な事件である。これはもう、無条件で賛辞を贈るしかない。ただ、わたしがこの試合に注目したのは、それゆえ、ではない。

 試合が行われたのが、2月26日だったから、である。スポーツが学校教育と深く結びついている日本の場合、早生まれはスポーツをする上でハンデとなることが多い。春や夏に生まれた子供に比べると発育が遅いため、早い段階で「自分には才能がない」と見切りをつけてしまう子供が珍しくないからである。

 ただ、そうしたハンデを乗り越えた子供の中には、後にスターとなるものも珍しくない。カズ、さらには中田英寿さんも、実は早生まれなのである――のだが、それもまた、ここでは関係のない話。

 Jリーグの開幕戦が2月25、26日に行われた。一昔前を思えば、そのこと自体に感慨を覚えてしまうのだ。かれこれ10年以上も前から、Jリーグではシーズンの移行が検討されてきた。日本の学期に合わせる春の開幕を続けるのか、それとも、欧米に合わせた秋開幕にすべきなのか。わたしは、プレーのパフォーマンスが落ちる夏の時期を避けるためにも、秋開幕にすべきだといまでも思っているが、東北や日本海側に本拠地をおくチームの関係者やファンが現行のカレンダーにこだわるのも、理解はできる。だが、そうしたクラブの意見を尊重しつつ、Jリーグの開幕は少しずつ前倒しされていった。そして今年は史上最も早い時期の開幕となった。

 最近では施設の充実によって変わってきたが、スタジアムに暖房施設がなかったころのブンデスリーガは、12月下旬にウインターブレークに入ると、2月の中旬まで中断されていた。つまり、今年のJリーグは、一昔前のドイツとほとんど変わらないカレンダーで運営されることになるのである。

 初年度のJリーグは、5月15日が開幕だった。旧来の日程を踏襲しているようで、実はずいぶんと遠いところまで来ていたのが、近年のJリーグだったのである。この周到さ、視野の広さには素直に脱帽する。我が家にも注文していたスマートテレビが届き、今週末からはダ・ゾーンでの視聴も可能になった。トラブルがないことを祈りつつ、さて、今年も楽しませてもらいましょうか。(金子達仁氏=スポーツライター)

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