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【コラム】海外通信員

ブラジルサッカー連盟の新ビジネス

[ 2016年11月11日 00:00 ]

 信じられないかもしれないが、ブラジルはサッカー王国と言われながらも、これまでサッカー連盟が主導して選手の育成に力を入れてこなかった。選手というのは雨後の筍の如く、あっちこっちから勝手に生えてきたものを摘み取るだけで良かったのだ。わざわざ育てなくても、よく育ったものを集めることに精を出していた。

 しかし、時代の移り変わりともに、男の子なら誰でもサッカーをするというほどサッカー人口が多いこの国も、人材不足が否めなくなってきた。ボールを蹴るか、凧を上げるかくらいしか遊びが無かった時代から、ゲームが子供たちの一番の遊びに代わった。都会には空き地は無くなり、車の交通量は増え、のんきにストリートサッカーに興じることもできなくなってきた。

 人材の豊富さ高いアビリティーで欧州サッカーを引き離していたのが、気がつけば追いつかれ、抜かされ…、もう勝手にいい選手が生まれるのを待っているだけではいられなくなった。

 もともとクラブ単位では選手の育成は独自のフィロソフィーに基づいてやってきていたのだが、今回、総元締のブラジルサッカー連盟(CBF)が低年齢層へのアプローチをすることになった。その名はCBFスクール。

 これまでCBFは常にトップの立場で、自らがクラブや末端の少年たちに歩み寄るということはあまり関心がなかった。セレソンはCBFの最大の財産で、そのステータスを自由に使うだけでよかった。

 ところが、そのステータスは1-7でドイツに負けたW杯ブラジル大会以降、すっかり転落。そこでCBFは考えた。セレソンおよびブラジルサッカーのブランド力を取り戻さなければスポンサーも遠のいてしまう。これはまずい、と。そこで考えたのが、CBFスクールという名の商売。

 7歳から15歳までの男女を対象にサッカークリニックをするというものだ。来年1月にサンパウロで第1回クリニックが6日間開かれる予定で、参加人数の10%は、CBFの社会活動部門が選ぶ貧困層の少年少女たち。5日間にわたって技術と理論を学び、最終日は元ブラジル代表選手などを招待した懇親会が開かれる。このプロジェクトは教育分野、スポーツ分野、マーケティング、国際関係などの専門家が集結して1年かけて案が練られた。CBFが推進する独自のメソッドをコーチ陣がCBFアカデミーで修得し、生徒たちに教える。

 日本で行われているようなトレセン制度ではなく、バルセロナやレアルが海外でクリニックを開くような感じ。狙いは、海外。特に中国、アメリカ、中東をターゲットにする予定。セレソンの名前を使って、もう一儲けするといったところか。

 CBFの独自のメソッドというものを無料で国内の少年少女たちに普及させて底辺からブラジルサッカーの活性化をするとか、ブラジルリーグの再編成を進め、欧州リーグのように『ブラジルリーグ』をブランド化させて海外に放送権を売る、グッズを売れるようにするなどにも、手を付けて欲しいものだが、まだまだその順番は来ないようだ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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