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【コラム】海外通信員

真価を問われるジダン レアル2つの問題点

[ 2016年10月15日 06:00 ]

レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督
Photo By AP

 レアル・マドリードのトップチーム監督に就任したシーズンに、いきなりチャンピオンズリーグ制覇を果たしたジネディーヌ・ジダンだが、ついにその真価を試される時期がやって来た。

 2016年1月、解任されたラファ・ベニテスの後任として、レアルのトップチームの手綱を握ったジダン。史上最高の選手の一人とされる男が昨季に示した効果は凄まじく、チームは優勝にこそ届かなかったもののリーガエスパニョーラで怒涛の追い上げを見せ、そしてチャンピオンズリーグではライバルのアトレティコ・マドリードを決勝で破って史上11度目の優勝を達成した。

 そうしてジダン・レアルは、さらなる期待を集めて今季を開始した。序盤には昨季の快進撃を継続させ、リーガでは開幕4連勝。昨季と合わせれば16連勝となり、ジョゼップ・グアルディオラが率いるバルセロナが樹立したリーグ最多記録に並んだ。期待に違わぬスタートダッシュである。

 だがしかし、レアルはその後に調子を落とし、リーガ第5節ビジャレアル戦(1-1)、第6節ラス・パルマス戦(2-2)、チャンピオンズリーグ・グループリーグ第2節ドルトムント戦(2-2)、リーガ第7節エイバル戦(1-1)と4試合連続でドローゲームを演じた。レアルの4戦連続ドローは、じつに2006~07シーズン以来のこと。またジダンが今季リーガ第7節までに手にした勝ち点数は、昨季のベニテスと同じ15となった。

 エイバル戦後にインターナショナルウィークが始まり、ジダン・レアルは苦虫を噛み潰すような思いのまま2週間を過ごすことに。その間、地元メディアはこのフランス人指揮官を神聖化して扱うことはなくなり、チームの抱える問題点が取り沙汰されるようになった。

 その問題点の一つは、カセミロのバックアッパーがいないことだ。昨季、ジダンはカセミロをアンカーとして起用することで攻守のバランスを整えることに成功したが、クラブは今夏にそのバックアッパーを与えなかった。ジダン自身はヌゴロ・カンテの獲得や結局アラベスにレンタル移籍したマルコス・ジョレンテを残すことを求めたものの、クラブはトニ・クロースがそのポジションでプレーできるとして、バックアッパーが必要とは考えなかったのである。

 けれどもレアルが4試合連続で引き分けたのは、カセミロの負傷離脱中である。ジダンは1-4-3-3から1-4-2-3-1にシステムを変更し、モドリッチとクロースの2ボランチなどでその不在を補おうと試みたが、バイタルエリアでのスペースの潰し方は拙くなってしまった。

 そしてもう一つの問題点は、ジダン自身が大きな責任を負うものである。つまりガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの“BBC”をアンタッチャブルなものと扱い続けていることだ。ジダンはレアルのトップチーム監督となった直後に「彼ら3選手は起用可能な状態であれば起用する」と語ったが、公の場でそう口にしたことが今となってマイナスに働いている。

 ジダンは今季も起用可能であれば“BBC”をピッチ上に揃えているが、ユーロ2016決勝の負傷の影響で満足にプレシーズンを送れなかったC・ロナウド、また今季序盤に負傷したベンゼマは調子が上がらぬままプレーしている。また唯一存在感を発揮しているベイルは、こちらは精度の低い右足でクロスを上げることが主な役割である、右サイドを主戦場としたままだ。

 アンタッチャブルな“BBC”の存在は、チームの成果に直結していない。ジダンが“BBC”を起用した際の勝率は67%(10勝4分け1敗)にとどまり、3選手のどれかが欠けている際の勝率が81%(17勝3分け1敗)とそれを上回る。そのようなデータもあって、ジダンが“BBC”起用にこだわることにチーム内では不満が生まれている。“BBC”とポジションが重なるアルバロ・モラタ、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオはもちろんのこと、ほかの選手たちもジダンの采配を疑問視し始めているのだ。ジダンが昨季に発揮したカリスマ性は、徐々に薄れ始めている。

 チャンピオンズ優勝というこの上ない成功から始まった監督ジダンの物語。今季、チャンピオンズ優勝を逃す余裕が生まれたレアルが傾注するのは、ここ8シーズンで1度しかトロフィーを掲げていないリーガだが、リーグ戦は運という要素がより少なくなりコンスタントに結果を手にすることが求められる。ジダンの指揮官としての力量は、ついに逆境に遭遇した、ここから試されることになる。(江間慎一郎=マドリード通信員)

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