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【コラム】海外通信員

南米&ブラジルサッカー改革への挑戦

[ 2016年10月9日 05:30 ]

 南米サッカー界は、欧州連盟の成功を横目に、さまざまな可能性を模索しなければいけない過渡期にきている。

 欧州チャンピオンズリーグと肩を並べる伝統を持つリベルタドーレス杯のさらなる活性化は不可欠だ。
チャンピオンズリーグは、出場国、出場チームを増やし、サッカー人気を各国にとどめず、欧州全土を巻き込んだムーブメントにして大成功を収めた。動く金額も半端ではない。

 南米サッカー連盟は、欧州のチャンピオンズリーグのように、ファイナルを1ゲームのみで第3国で開催するレギュレーションに変更する可能性を示唆していたが、来年に関しては従来通りのホーム&アウェー方式をキープすると発表した。

 この1ゲーム方式、欧州のように鉄道が発達し、各国が小さく隣接しているならいいが、南米のように広大で、交通網が発達していない国では、移動の問題がある。さらにいえば、応援するチームの地域性が非常に濃く、例えば、アルゼンチンのクラブとコロンビアのクラブが第3国のブラジルのマラカナンスタジアムでファイナルをしても、どれだけの観衆が集まるかは、はなはだ疑問だ。ブラジル人は、おそらくひいきのクラブでもない高い試合を観に行く人は非常に少ないだろう。では、コロンビアからわざわざ飛行機に乗ってどれほど観衆がやってくるだろうか?交通費、宿泊費など経費を考慮すると、欧州のような大成功を収めるのにはハードルが高い。

 38チームから42チームに出場クラブを増やして、大会を2月から11月へと長期間にすることは悪いアイデアではない。が、問題はどれほどの儲けがあるか、だ。
ブラジルは、たくさんのチームが存在し、年間を通して州リーグ、全国リーグと試合に事欠かない。試合ごとの勝利、引き分けボーナスが、それなりに保証されなければ、出る価値が少なくなってしまう。

 年間スケジュールの変更には、各国のサッカー協会が協力して、日程調整をしなければならない。特にブラジルは、複数の大会が絡んでいるため、よほどブラジルサッカー連盟が本気で国内サッカー界の方針変換を舵取りしなければいけない。
かねてから、欧州サッカー界とシーズンを合せるべきだという意見は出ていた。というのも、ブラジルのシーズンは1月始まりの12月終わり。シーズン真っ最中の7、8月に欧州の移籍マーケットが開くため、欧州のクラブに選手を持っていかれるチームは年に2回チーム編成をしなければならない現状に面している。リベルタドーレス杯の改革に合わせ、ブラジルサッカー界も真剣に、少しでも国内サッカーが活性化するように取り組みを始めなければならない。

 また、2019年度からの推奨事項として、出場クラブは、女子サッカーチームを持つこととなった。実は、2009年から女子リベルタドーレス杯が開催されているが、注目度は非常に低い。同じようなクラブがタイトルを取ることになる。経費がかかるわりに、リターンはないという現状に、多くのクラブが二の足を踏んでいるのが実情だ。リオ五輪女子サッカーで、ブラジルが銅メダルを逃した時、主将のマルタ(2006年度より5年連続でFIFA最優秀選手賞を獲得している)は、「どうか女子サッカーの応援を辞めないで!」と涙ながらに訴えた。が。サッカー王国ブラジルとはいえ、女子サッカーの環境は非常に厳しい。南米サッカー連盟の音頭で、少しでも女子サッカーに注目や支援が向かうと良いのだが。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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