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【コラム】海外通信員

本田 故障で出遅れるも上向き モンテッラ監督「何の問題もない」

[ 2016年8月16日 05:30 ]

本田はミランに残留できるか?
Photo By AP

 8月10日、レッジョ・エミリアで行われたTIM杯。ミラン、サッスオーロ、セルタの3チームが対戦する変則3セットマッチで、本田圭佑はおよそ70分間にわたって出場した。第1戦のセルタ戦にはフル出場。そして第3戦目のサッスオーロ戦でも24分間出場。ふつう、プレシーズンに行われるこういった変則マッチには、1試合45分間の出場で終わる。しかしこの日、本田は長い時間使われていた。前日、イタリア衛星テレビスカイ・スポーツのレポーターは「モンテッラ監督は本田のことをあまり考えていない」と報道していたのだが、戦力外といわれる選手にしてはずいぶん長く使われた印象だ。

 プレーを見て、周囲から浮いている感じもしなかった。モンテッラ新監督は守備の際に4-1-4-1となる4-3-3をベースにチームを作っているが、本田は右のウイングとしてプレー。ただ上下動をこなしてスペースを埋めるだけではなく、中盤で多くボールに触ってパスをさばく。割とボールも集まり、チャンスを作ることもできた。そして44分、ボナベントゥーラからショートパスを受けると、ワンタッチで前線のスペースへ正確なスルーパスを出した。これが、セルタCB陣の裏を取って裏と走ったバッカへ完璧に通る。もっともGKと1対1になったバッカはこれを直接GKにぶつけてしまい、アシスト未遂となった。

 その前半は結局0-0でPK戦に突入。3人成功した後で4人目のキッカーとして登場した本田だったが、倒れこむGKをよく見て逆を狙ったボールは足元へ行ってしまい失敗(そのあとボナベントゥーラが決めてミランは勝利を収める)。本田にとってはやや間の悪い結果にが、パフォーマンスそのものは悪くはなかった。試合後、モンテッラ監督は本田について「前半も後半もいいプレーをしていた。コンディションが良くなればさらに良くなる」と評しており、「地元の新聞が『モンテッラ監督があまり本田を考慮していない』と書いていた?その地元とはどこのことだ?本田はミランの一員だ。何の問題もない」と放出する意思も特にないことを示した。

 現役時代はストライカーとして有名で、ローマでは中田英寿氏ともチームメイトだったモンテッラ監督は、サッカー指導者としてかなり柔軟な考え方の持ち主である。イタリアには珍しくパスサッカーを展開して好成績を挙げるとともに、選手起用もフレキシブルにこなし、フォーメーションも固定せず3バックや4バックも併用する。時にはクラブに文句を言ってまで選手間の距離を縮めたパスサッカーを要求していた本田とは、サッカーの相性自体は悪くないのではないかという印象がした。

 もっとも、現時点で、ポジション争いで先行していると思われるのはスソだ。ミランではなかなかフィットできずに半年間ジェノアにレンタルに出されたが、その”出向先”で急成長。ガスペリーニ監督の薫陶を受けて、得点を意識してチャンスを作る攻撃的なプレーヤーに変化したのだ。19試合で6ゴールを挙げミランに戻ると、このプレシーズンでも2ゴールを挙げている。疲労を考慮されてTIM杯の出場はサッスオーロ戦の20分間にとどまったが、その間に鋭いドリブル突破から正確なラストパスを出し、ニアンのゴールを演出している。故障で出遅れた本田が、コンディションの向上でどれだけアピールができるかが勝負となる。

 この夏の移籍市場で、新たな攻撃的MFの加入はどうもなさそうである。地元紙は11日、ミランが獲得を画策しているのはボカ・ジュニオールズ所属の19歳、ウルグアイU-20代表のベンタンクールだと報じた。下り目の位置から試合をコントロールし、後方から攻撃に絡むプレーを得意とする選手であり、コリエレ・デッロ・スポルトは「ガゴとリケルメの中間」と紹介している。そしてベンタンクールはEU圏内国のパスポートを有しておらず、獲得の場合は外国人獲得制限のスロットを一つ消化することになる。そしてミランが獲得できるのは、現状であと1人だけ。これまでチェルシーのコロンビア代表MFクアドラードやベシクタシュMFソサが噂となっていたが、彼らはEU国籍を持っていない。ベンタンクールを獲得した場合は彼らを獲得することが不可能となる。(神尾光臣=イタリア通信員)

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