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【コラム】海外通信員

Jリーグ20周年記念“あの人は今” 2013年版

[ 2013年10月10日 06:00 ]

 1993年に始まったJリーグが20周年を迎えた。赤ちゃんが成人するまでの月日が過ぎたことになる。今の若者にとって、物心ついたときからプロサッカーリーグがあるのが当たり前で、子供たちに人気のスポーツは野球とサッカーが二分するようになった。サッカーファンにとっては、なんとも感慨深い年月である。ブラジルからJリーグを見るものにとっても、同じである。

 ブラジルからも実に多くの選手が、この20年日本にお世話になってきた。ブラジルで“日本人”は、サッカーが下手くそな人の代名詞なため、日本サッカーはレベルが低い、楽勝だというイメージを持っていたブラジル人たちも、もはやそんな目で見なくなった。

 なぜなら、日本でプレーした選手が、レベルを落とすことなくブラジルに戻っても活躍しているし、日本代表の躍進も日本サッカーの評価を高めている。ブラジルに帰国して、ステップアップして引退を迎えた選手もいれば、まだまだ戦いを続けている選手や監督もいる。誰もが、Jリーグの経験をとてもよかったものと懐かしがる。

 では、2013年版“あの人は今”をやってみよう。

 2001年に来日し、鹿島アントラーズをJリーグ年間王者に導いた後、2003年から3年間川崎フロンターレのユニフォームを着たアウグスト。ジュニーニョ、マルクスと並んで助っ人として2004年のJ2優勝、J1昇格に貢献した左SBだ。当時34~37歳だったアウグストは兄貴のような存在でチームを引っ張った。

 フロンターレでの最後の試合にはサポーターたちと涙のお別れをして、「フロンターレを忘れない!」と言った。その通り、彼は今でも心の中にフロンターレを持ち続けている。「いつか日本に監督として戻りたいんだ」と夢を語る。

 帰国後、出身地のブラジリアに戻り引退した。リーダシップと冷静な判断、ゲームの読解力と監督になる素質を兼ね備え、さらに勉強を重ね2007年から指導者の道を進むことになった。これまでにガマやブラジリエンセのプロチームで指揮を取り、今期から古巣のゴイアス・エスポルチ・クルービ(ブラジリアと隣接)のU-20の監督を務める。アウグストは既にプロチーム指導の経験があったのだが、ゴイアスは全国リーグ1部の強豪クラブ(かつて前園がプレーしたことがある)であり、アウグストは指導者としての腕を見込まれてU-20チームを任された。

 そして、余りにも早く結果が出ることに。今年1月、受け持ったばかりのチームでブラジルの若手登竜門といわれるコッパ・サンパウロでファイナルまで進んだのだ。決勝ではサントスに負けたものの、アウグストの監督としての評価が認められ注目を集めることになった。次は、ゴイアスのプロチームの監督に上がることが目標で、その先に見ているのはJリーグの監督。アウグストは、今でも苦楽を共にしたフロンターレサポーターのくれた応援と愛情を忘れていない。「フロンターレに戻って恩返しがしたい」という彼の気持ちは本物だ。

 一方、「サッカー人生はもう終わり」とサッカー界から完全に離れる人もいる。元東京ヴェルディのゼ・ルイスは、今年6月全国リーグ1部のパラナクルービで最後の選手人生を終えた。34歳だった。「サッカーで十分にやることはやった。これからは、別の人生を歩みたい」と。新たに飛び込む業界は建設業。実は、選手をやりながら兄弟が土木技師ということで故郷サルバドールに建設会社を起業していた。
「サッカーのお陰で今の僕はあるから、本当に感謝している。やることはすべてやったから、未練は全くない。これからは新たな分野で頑張る」

 なんといっても、ブラジルは今、不動産バブル。都市には20階ほどのマンションがにょきにょき立ち並ぶ。予約開始とともに、すぐに売切れてしまうというバブリーな世界だ。ゼ・ルイスはサッカーで稼いだお金を投資して、きっと大儲けをすることだろう。なんともうらやましい話だ…。

 さらに、サッカーでなく異業種でブレイク中の一人を紹介しよう。

 元ベガルタ仙台のジョエウ・サンターナ監督を覚えているだろうか?ちょっと強面の、でも人のよさそうなオジサン。いや、失礼。フラメンゴ、コリンチャンス、フルミネンセなどブラジルのビッグクラブの監督のみならず中東の経験もある国際派。極めつけは2010年W杯南ア大会では南ア代表を率いたトップ中のトップの監督だ。が、今ジョエウ監督はブラジルで人気CMボーイならぬCMオジサンになっている。

 発端は、南ア監督時代に英語で答えたインタビューだ。ジョエウの英語は、強烈なポルトガル語訛りに加え、怪しいポルトギッシュ(ポルトガル語と英語のミックス)で、ばかにされ、おちょくられていたのだが、ジョエウは堂々と「私はこの英語で今まで中東でも南アでも問題なくやってきた!」と言ってのけた。これに目をつけたのがペプシだった。この独特の英語のインパクトを逆利用して製品をアピールしようという策が功を奏し、ジョエウのCMは大当たり。なんとも不思議な怪しい英語がユーモラスであり、ダサかっこいいと人気になったのだ。

 さらに、シャンプーのCMにも起用され、例のポルトギッシュを早口でまくし立て、第2弾ではラッパーになった!

 YOUTUBEでこれまでに800万アクセスを記録している。とにかく一度見てほしい!ノリノリだ。
http:/youtu.be/TWYVeLipIlw

 ちなみに、現在、監督としては無所属。CMオジサンだけでなく監督としてのオファーも待っている。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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