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【コラム】海外通信員

2部落ちしたビックチーム・リバープレートのその後は?

[ 2011年9月12日 06:00 ]

 アルゼンチン2部リーグ(PRIMERA B NACIONAL)が始まった。

 やはり最大の注目はリバープレート。3連勝と好スタートを切ったが、9月3日のキルメス(今季2部落ち)戦は終了直前に追いつかれ、あと味の悪い引き分け。3勝1分けとなった。このオフに補強したストライカー、キャプテン・カベナギは1ゴール。2部とはいえ油断できない戦いが続いている。

 ビッククラブ・リバープレートがいることから、1部リーグと同様に今季は2部リーグも注目されている。1つはテレビ放送で、2部の試合も地上波、国営放送で見られるようになったことだ。昨季までは1、2部リーグとも放送権は、民間企業が持ち、ケーブルテレビだけの有料放送だった。09年から政府が介入し、1部リーグは国営放送に放送権が移り、誰もが見られるようになったが、2部はケーブルテレビのままだった。しかし今季は、国民の約半分近いファンがいると言われるリバープレートが2部に降格したことで、政府の対応も早かった。もちろん背景には、政府と政府に批判的な民放テレビ局の間でサッカーを巻き込んだ政治的なやり取りがあった事は間違いない。結果的にテレビで放送され、スポーツ新聞や一般紙のスポーツ欄に、2部リーグの試合スケジュールが大きく掲載され、2部リーグの情報が豊富になった。

 ホーム&アウェーの観戦方法も変わった。今までファン同士の争い、スタジアムの安全対策から、2部リーグはホームチームのサポーターしか入場できなかった。しかし、リバープレートのファンは桁違いに多く、ブエノスアイレス以外の地方にも熱狂的なファンがいる。彼らが黙っているわけがなく、今季からアウェーのファンも観戦できるようになった。その裏には入場者数が少ない2部チームにとって、リバープレートファンが来ることは観客動員数のアップにつながり、入場料収入増になる。おもわぬ経済効果もあるわけだ。ビッグクラブ・リバープレートのためにルールを変えてしまうところはサッカー王国アルゼンチンらしい。

 しかし、肝心のリバープレートは、入れ替え戦で負けたときにサポーターが暴れてスタジアムを破壊したため、現在はホームスタジアムが一時使用禁止になっている。ウラカンのスタジアムを借りてホームゲームを行っており、あと4試合はウラカンのスタジアムで試合をする。しかも、1試合は無観客、3試合はリバープレートファンクラブ会員のみでの開催になる。小さいクラブはリバープレートファンの来場を見込んで、他クラブの大きなスタジアムを借りているところもあるが、リバープレートはあまり恩恵にあずかっていないのが現状だ。

 リバープレートのライバル・インデペンディエンテも8月3日に静岡・エコパスタジアムで行われたスルガバンクカップでジュビロ磐田と対戦して、2-2の末にPK戦で敗れた。南米SUDAMERICANA優勝チームとJリーグ優勝チームが戦う大会だったが、米国で合宿まで張って日本に乗り込んだだけに、敗戦は衝撃だった。

 この試合のラジオで、2人のコメンテーターが面白い話をしていた。コメンテーターのA氏が「アルゼンチンのチームが日本に負ける、と言うのは考えられない」と言うと、別のコメンテーターB氏が「なぜそんなことがいえるんだ?おまえは過去の歴史、栄光を基に話しているだけだ」と反論した。A氏は、「アルゼンチンはまだ世界トップレベル」と思っており、現実を把握していない。B氏に「86年の栄光から何年経過していると思ってるのか?25年間W杯優勝がない国ということを真剣に考えた方がいい。日本に負けない根拠は?日本のサッカーの事情どこまで知っているの?」と、たたみかけられた。

 A氏のように考えているアルゼンチン人は多いが、B氏のような考えの人もいる。少しでも多くの国民が現実を受け止め、広い視野でサッカー界を見ないと、強豪アルゼンチンの復活は遠いものになる。(大野賢司=ブエノスアイレス通信員)

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