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【コラム】海外通信員

オランダで活躍する日本人選手

[ 2011年2月10日 06:00 ]

オランダ1部リーグでデビューを果たし、安田(左)が所属するフィテッセと対戦するフェイエノールトの宮市
Photo By 共同

 海外でプレーする日本人選手が急激に増えている。特にオランダ、ドイツは目を見張るほどだ。オランダで考えると、すこし前まで2部でプレーする本田圭佑がひとりいただけだった。今ではVVVの吉田麻也とカレン・ロバート、フィテッセの安田理大、フェイエノールトの宮市亮と4人に増えた。オランダ国境近くのドイツ、ルール地方のクラブには、ドルトムントの香川真司、シャルケの内田篤人、ケルンの槙野智章がいる。ドイツ全土だとさらに数が多くなる。

 昨年末、吉田に個人ブログによく登場する内田について尋ねると、「まあ、一個違いという隔たりはほぼない関係です」と、笑っていた。「時期を見つけて、みんな日本人で集まってご飯でも食べようかって。でも僕がそんなできないから、やっぱ上の人たちにやってもらわないと」。そんなふうに語っていたが、その食事会は昨年、代表キャプテンである長谷部を筆頭に、香川や鄭大世(チョン・テセ)らも参加して実現したことはニュースにもなっていた。

 今年に入ってからは、安田、槙野らもその輪の中に入ってきたようだ。その二人と、吉田とともに食事をしたカレンは、「あのツートップは、安田と槙野は、ホント、面白いですね」と絶賛していた。

 「オフ・ザ・ピッチに関してはね、俺と槙野は結構、世界レベルやと思うんですけど。オフ・ザ・ピッチに関してはね(笑)。オン・ザ・ピッチでもそうなれるようにね」とは安田。吉田や安田、槙野など社交性が高いメンバーが多いこともあるのか、仲良くやっているようだ。

 「日本人が多いですから、今は。(川島)永嗣くんともよく話すし。いろんなチームの情報が得られていいですね」。吉田のコメントだが、なんだかんだで海外生活、しかも激しい競争にさらされるプロ生活を営んでいく中で、身近に気軽に連絡をとりあえる仲間がいるのはとてもいいことであるように思える。プロ生活を送る上でも、お互いにいろんな相談ができるのもいい環境なのではないだろうか。しかし、彼らはただ馴れ合っているだけではない。「ウッチーはやっぱり、ビッグクラブでやっているんで、いろんな話が聞けて楽しいですし。でもたまにそのギャップに失望することはありますけど(笑)」。昨年末、アジアカップに参加する以前の吉田はそんなことを語っていた。「むこうはキャリアのある選手だし、僕は代表に行ったといっても、若い世代として行っただけで」。お互いを強烈に意識しながら、サッカーに取り組んでいるのだ。

 「ウッチーと佑都に関しては、昔からずっと切磋琢磨してきたライバル」。安田は言う。「今は完全に俺が遅れを取ってますけど、しっかり必死に食らい付いて行きたいなと思う。必死にやっていれば、チャンスは絶対に回ってくると思ってるんで、そのチャンスを掴めるように。ここオランダでしっかりとプレーして、試合に出続けることが大事かなと思います。槙野もね、出会いはずっと昔で、ずっと一緒にやってきている。俺らの世代というか、若い選手が海外に羽ばたいてきて、そこで活躍しているっていうのは、すごい刺激になりますし。僕ももっとやらんとあかんな、という気持ちになります」。

 みんなで集まって食事をしようと言っても、自分だけクラブで出場機会もないような状況だったら。「ちょっと寂しいですね」とカレンは言う。「最低限、試合には出てなきゃ、ちょっとダメだと思ってる。スタメンで出ないと。代表クラスがみんな周りにいるから、やっぱり刺激になる。一緒にやりたいなっていうのがあるから。目標を見失わずにいられる環境は、やっぱりここかなと思います。上に行きたいんで、どうしても結果を出さないと。結果を残したいです」。

 カレンはこれからスタメン奪取に向けて取り組まなくてはいけない状況だ。一方でスタメンを取っている選手たちにしてみても、VVVにしろ、フィテッセにしろ、そして川島永嗣が所属するリールセにしろ、下位に沈んでいる。簡単な状況にはない。「麻也は麻也で難しい状況の中でやっているのかもしれないですけど。僕も同じような状況の中でやっている。それは確実にプラスになってくると思うし、今こういう状況だからこそ、こだわれる部分というのもあると思う。お互いこういう環境の中でもっともっと成長していけたらいいのかなと思います」。川島もそんなふうに語っていた。

 2月5日から6日にかけて、オランダでもリーグ戦が行われた。VVVはNACと、フィテッセはフェイエノールトとそれぞれ対戦した。結果は、VVVは3?0で勝利。宮市のデビュー戦となったフィテッセ対フェイエノールトは1?1の引き分けに終わった。月曜日のオランダの新聞、テレグラフ紙の採点(10点満点)は以下の通り。

 吉田:7、ムサとともにチームトップタイの評価。週間ベストイレブンに選出される。
 カレン:途中出場につき採点なし
 安田:6.5、アイサッティ、マティッチと並び、チームトップタイ
 宮市:6.5、チーム単独トップ

 彼らは皆、ドルトムントでセンセーションを巻き起こした香川や、チャンピオンズリーグでプレーする内田を横目に見ながら、目の前の試合に取り組んでいる。それぞれがお互いのプライドを刺激し合いながら、切磋琢磨しているのだ。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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