【コラム】海外通信員

南米王者をめぐる熱い戦い 決勝でスーペルクラシコも!?

[ 2018年10月23日 13:40 ]

コパ・リベルタドーレス準々決勝、クルゼイロ(ブラジル)を下し4強進出を果たしたボカ・ジュニオルス(アルゼンチン)
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 南米チャンピオンを決めるカップ戦、コパ・リベルタドーレス。欧州のチャンピオンズリーグに匹敵するタイトルとして、南米諸国の強豪クラブによって毎年熾烈な戦いが繰り広げられるが、今年は準決勝にアルゼンチンとブラジルの名門が出揃った上、アルゼンチンからは2大ビッグクラブであり宿敵同士のボカ・ジュニオルスとリーベルプレートが進出したことで大きな注目を集めている。

 準決勝のカードはリーベル対グレミオ(現地時間10/23に第1戦、10/30第2戦)、そしてボカ対パルメイラス(10/24第1戦、10/31第2戦)。一昨年までは同じ国のクラブ同士が決勝で顔を合わせることができないルールがあったため、今回のような場合は準決勝でリーベル対ボカが実現する形になっていた。だが昨年のルール改正で同国のクラブ間の決戦も可能となったことから、今年はファイナルでブラジル勢対決、またはアルゼンチン勢対決が実現するかもしれない。

 もしスーペルクラシコ(ボカ対リーベルの代名詞)がコパ・リベルタドーレスの決勝で実現したら、例えばチャンピオンズリーグ決勝がレアル・マドリー対バルセロナになるくらいの超ビッグカードだが、実際には「面白そう」という粋に留まらず、アルゼンチン国内は大変なことになる。全国民の半数以上がボカとリーベルのサポーターという統計があること、そしてこの国ではサッカーがスポーツという概念を遥かに超える多大な影響力を持っていることなどから、決勝が行われる11月7日から28日までの間は国中が騒然となるに違いない。

 「違いない」と断言できるのは、前例があるからだ。

 2015年コパ・リベルタドーレスの決勝トーナメント1回戦でボカとリーベルが対戦した時、アルゼンチン国内は異様な空気に包まれた。よりによってリーグ戦でのスーペルクラシコも重なり、両チームは12日間に3回も対決することになっていたため、テレビを始めとする主要メディアはいずれも、いつもなら欠かせない政治経済の問題もそっちのけでスーペルクラシコ3連戦の話題を執拗なほど取り上げ、互いのサポーターがSNS上で挑発し合い、脅迫めいた言葉が飛び交うという、まるで間もなく戦争が勃発するかのような緊迫感と危機感が漂っていた。

 このように書くと大袈裟だと思われるかもしれない。だが、こういった表現が大袈裟であったら良かったのに、と今でも心底思う。なぜならあの時、その緊迫感と危機感から人々の間で狂気が生じ、ボカのホーム「ボンボネーラ」で行われた第2戦で、後半開始前、ボカのサポーターがピッチに入場しようとしたリーベルの選手たちに向って催涙スプレーを撒き散らすという信じ難い事件が起きてしまったからだ。

 催涙スプレーの影響から、リーベルの一部の選手たちは身体的な影響を受けてプレー不可能な状態になった。現場の状況については「リーベルのチームドクターが選手たちの顔に水をかけたため症状の悪化を招いた」、あるいは「スプレーは選手のところまで届いていなかった」などという様々な憶測が存在し、真相が解明されないままとなっているが、「ボカのサポーターがスタジアム内に危険物を持ち込み、リーベルの選手に身体的な危害を加えようとした」ことは明らか。最終的に没収試合となり、ボカの敗退が決まるという非常に残念な結末となった。その後リーベルは順調に勝ち進んで悲願の優勝を成し遂げたことから、ボカのサポーターたちにとっては忌々しく屈辱的な記憶として残ってしまった。

 3年前に起きたばかりのあの事件のせいで、今年のコパ・リベルタドーレス決勝でスーペルクラシコが実現するかもしれない可能性を懸念する人は少なくない。アルゼンチンにおいてサッカーを取り巻く環境はあの時から何も変わっていないし、ボカ対リーベルに限らず「クラシコ=危険」という構図は健在である。その証拠に、現在行われているコパ・アルヘンティーナの準々決勝でロサリオ・セントラル対ニューウェルスが対戦することになったのだが、ロサリオを本拠地とする名門同士のクラシコとあってサポーター同士の衝突の危険が伴うため、「中立地での無観客試合」として行われることになった。この決断に不服を抱いた両クラブの役員たちが話し合い、地元の警察との入念な打ち合わせを行なってロサリオでの開催を提案したが、安全が保障できないという理由で却下されている。

 ただでさえアルゼンチンでは首都圏のブエノスアイレスでアウェーチームのサポーターの入場が認められていないほど危険だが、クラシコとなるとその度合いは増す。南米王者決定戦での歴史的なスーペルクラシコが現実のものとなるかどうかはまだわからないが、それにしてもサッカーを純粋に楽しむことができないこの嘆かわしい環境は何とかならないものなのか。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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