【コラム】海外通信員

ナポリの今 アンチェロッティのアプローチ

[ 2018年10月13日 07:00 ]

今季からナポリで指揮を執るカルロ・アンチェロッティ監督
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 昨季、ユベントスをギリギリまで追い詰めたナポリ。戦力差のある相手に美しい攻撃サッカーで食い下がり、5月の直接対決では敵地で勝利をもぎ取るほどだった。ところが今シーズン、ライバルのユベントスはご存知の通りクリスティアーノ・ロナウドを獲得。彼の他にもジョアン・カンセロにエムレ・ジャンという強力な即戦力を2人連れてきた結果、ナポリとの戦力差はより大きなものになった。第6節の直接対決では0−3で完敗し、この序盤にして勝ち点差6もの大差をつけられてしまった。

 昨季のサッカーを作り上げていたマウリツィオ・サッリ監督は、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長と折り合いがつかずに退団。そのサッリは新天地のチェルシーで早速素晴らしい成績を挙げている一方、残されたナポリはライバルのユーベに差をつけられてしまった。今季はダメかとファンやメディアが肩を落としたその数日後、彼らはとんでもないことをした。UEFAチャンピオンズリーグのグループステージで、昨季準優勝のリバプールに勝ったのである。スコアこそ1−0の僅差だが、試合そのものはナポリが常に優勢だった。「相手を讃えたい。我々がシュートを打たせてもらえなかったのは久々だった」とユルゲン・クロップ監督は脱帽した。

 ナポリのベンチには、今シーズンから名将が座っている。あのカルロ・アンチェロッティ監督である。2009年にミランを退団したのを最後にチェルシーにパリ・サンジェルマン、レアル・マドリードにバイエルン・ミュンヘンと名門のメガクラブを渡り歩いてたこの大物に、デ・ラウレンティス会長は白羽の矢を立てたのだ。そしてリバプール戦ではベテラン戦術家としての才覚を発揮して、クロップ監督のお手芸である近代的な戦術『ゲーゲンプレッシング』をやりこめた。

 FWの選手が激しく圧力を掛け、DFラインでのパスを繋がせないようにしてボールを奪うのがリバプールの戦術の柱だ。これに対してアンチェロッティ監督は、ある仕掛けをした。4バックの一角である右サイドバックを、本来センターバックの選手にプレイさせる。そしてボールを自分達がキープした際、3人のセンターバックと左のSB、そして右ウイングの選手が横いっぱいに広がる。まるで3バックのように幅を取ったナポリに対し、リバプールの選手たちは圧力の掛けどころが絞りづらくなる。前で圧力を掛ける選手の枚数が足りず、サイドバックが仕方なしに高い位置を取ってプレスを掛ける。するとその後ろを速攻で突いて、ペースを握るという算段だ。

 そして試合終了間際に決勝ゴールを奪ったのは、地元ナポリ出身のファンタジスタであるロレンツォ・インシーニエ。これもまた、アンチェロッティ監督の手柄であった。サッリ監督の時代は4−3−3の3トップとしてサイドでチャンスを作っていたが、これを2トップの一角にコンバート。前線を自由自在に動いて、守備陣のマークから逃れてゴールセンスを生かした。

 「試合前の午後7頃、監督に電話を掛けたんだ。そしたら『今日は勝ちますよ』ってね。そして試合終了間際にゴールだろ。どんなに私が興奮したかわかるかね」。デ・ラウレンティス会長は後日、コリエレ・デロ・スポルトのインタビューにそう語っていた。

 5大リーグでいずれもタイトルを獲得してきた名将の手腕は、リーグ戦の結果にも現れ始めてきている。リバプール戦から4日後のサッスオーロ戦では、メンバーの多くを入れ替えながらも好調の相手に完勝をおさめた。連係を重視するあまり、メンバーを入れ替えた時の闘い方が不安定になるサッリ監督の時代とは異なるところだ。「前は読まれやすかった。今の方が安心して見ていられる」一人のナポリファンはそう語っていた。

 華麗なパス回しをベースにした攻撃力は維持しながら、戦術面での修正で堅実性を加えるのがアンチェロッティのアプローチだ。「ユーベが歩みを誤った時に、すぐ近くにつけているようにはしたい」。指揮官の目論見通りに行けるかどうか。(神尾光臣=イタリア通信員)

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