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【コラム】海外通信員

イングランド代表が見据えているW杯はロシアではない!?

[ 2018年5月28日 19:00 ]

イングランド代表主将を務めることが決まったFWハリー・ケイン(24)
Photo By スポニチ

 イングランドサッカー協会は5月16日、2018FIFAワールドカップロシアに臨むメンバー23名を発表した。本大会のメンバーには、チームのエースでキャプテンに任命されたハリー・ケイン(トッテナム)や、岡崎慎司の同僚で今シーズンも好調を維持しているジェイミー・ヴァーディ(レスター)などが名を連ねた。

 イングランド代表はW杯欧州予選グループFを無敗で首位通過。本大会ではグループGに入り、6月18日の第1戦でチュニジア代表、24日の第2戦でパナマ代表、そして28日の第3戦ではベルギー代表と対戦する。グループリーグを1位もしくは2位で通過すると、ノックアウトステージにて日本代表との対戦の可能性もある。

 今大会のイングランド国民の代表チーム、スリーライオンズへの国民の期待感はそこまで高くないというのが現状である。これまで代表チームは期待を裏切り続けてきた。ジェラード、ランパード、ベッカムなど史上最強と謳われたメンバーで挑んだ2002年の日韓大会、2006年のドイツ大会でベスト8に入ったが、2010年の南アフリカ大会ではベスト16、前回の2014年ブラジル大会ではグループリーグ敗退と、数十年間ワールドカップでは思うような結果が残せていない。

 「決勝まで行くというのは、ほとんど奇跡に近いだろう。若い有望な選手が揃っており望みは決してないわけではないが、グループステージ突破という現実的な目標を直視しなければならないだろう」と右サイドバックであるカイル・ウォーカーが英国メディアに語っているようにワールドクラスのライバル達に近づくための準備期間にある若手チームであることは共通認識としてある。

 では一体イングランド代表は、どこを見据えているのか?昨年末、筆者がイングランド代表チームの総本山であるセントジョージパークを訪問し各年代のチームスタッフから話を聞いていると、ロシアW杯はもちろん本気で戦うべき舞台であることは間違いないが、2020年EURO、2022年カタールワールドカップを中長期プロジェクトの着地点として定めているではないかと感じとった。サッカー協会のテクニカルダイレクターを務めるダン・アシュウォース氏はBBCのインタビューにて大会への展望を次のように話している。

 「今大会のグループステージで敗退するつもりは毛頭ない。今回のW杯で勝つ可能性がないかって?そんなことはない。選手たちのコンディションを管理するのは簡単なことではないが何が起こるかなんて誰もわからない。たしかに若手たちのタレントは豊富で希望に満ちている。我々はU−17とU−20のW杯を制覇しており、まさしく今プロジェクトの過程にある。しかしこのプロジェクトが成功を収めるかどうかは、今後のA代表で結果を残せるかどうかだろう。」

 「国際舞台で活躍するためには?ということをテーマに10カ国のリサーチを進めてきた。プロセスと結果の関連性を研究してきたのだが、2つの点に着目した。1つ目はユース年代での結果がW杯本番での結果に関連性があること。ドイツとスペインの優勝メンバーは彼らが10代の時にすでに世界で成功を掴んでいた。もう一つは、ユース年代からの代表選手としてキャップ数が多いということだ。長期的なプロジェクトだが、私は成功すると信じている。」

 イングランドサッカー協会は5年ほど前から自分たちのプレースタイルをイングランドDNAとして定義付け、どのようにすればA代表が勝つことができるのかというプロジェクトを育成年代含めて大きく前進させながら成功を収めてきている。実際にそのなかでタレントの芽が大きく育ち始めており、今大会においてもラシュフォード、デレアリなどの初出場組の活躍が期待されているが、彼らが圧倒的な結果を出せるほど甘くはない世界だろう。

 大きな舞台でどのようなパフォーマンスを披露することができるのか、その経験が2年後のEUROと4年後のW杯に向けてどのように生かされ、またどのような10代の選手たちが追随できるかは非常に期待がもてる。翻って、日本代表の行き当たりばったりの人事と自国のサッカーの方向性を外国人監督に丸投げしている姿を見ていると、まだまだ日本が国際舞台で決勝のピッチに立つのは遠いのではないかと実感している。(ロンドン通信員=竹山友陽)

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