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【コラム】海外通信員

ベルギーリーグ プレーオフ制度

[ 2018年4月4日 06:00 ]

直接対決で競り合うヘントの久保(左)とアンデルレヒトの森岡
Photo By 共同

 ベルギーリーグはレギュラーシーズンを終え、プレーオフが始まった。ここで改めてベルギーのプレーオフ制度を紹介しておきたい。

 ベルギーリーグ1部は、全16クラブで争われる。レギュラーシーズンが全30節。第30節が終わると、プレーオフが始まる。レギュラーシーズンの上位6クラブがそれまでの勝ち点の半分を持ち勝ち点として、プレーオフ1に参加。プレーオフ1全10節の結果を持って、優勝を決める。ちなみに、レギュラーシーズン首位だったクラブ・ブルージュは勝ち点67だったが、プレーオフ1開始時は勝ち点34からスタートする。2位のアンデルレヒトが勝ち点28(レギュラーシーズンは勝ち点55)、4位だったヘントは勝ち点25(レギュラーシーズンは勝ち点50)からスタート、となる。

 プレーオフ1には、日本人が所属するふたつのクラブが進出している。森岡亮太が所属するアンデルレヒトと、久保裕也がいるヘントだ。迎えた第1節、4月1日(日)には日本人対決となるカードが組まれていた。

 ブリュッセルで行われたアンデルレヒト対ヘントで、森岡はスタメン出場、久保はベンチからのスタートとなった。

 立ち上がりから鋭い攻めを見せたのはヘントだった。しかし、前半15分を過ぎる頃からアンデルレヒトが盛り返す。森岡が攻守で頻繁にボールに絡んでアンデルレヒトの華麗なパスワークを演出していた。だが、前半終了近くになると、再びヘントが攻勢に。互いに主導権を取り合う緊張感のある前半は、0−0で終了した。

 後半2分、左サイドから流れてきたボールを押し込む形でヘントのデジャゲレが先制点を決める。追うアンデルレヒトは後半13分、森岡がビッグチャンスを掴んだ。MFクムスからの縦パスを森岡がペナルティエリア内で受ける。「トラップまでは完璧で、正直シュートもイメージ通り。キーパーも見えていましたし」とは森岡。トラップでゴール方向を向いて冷静に右足のインサイドキックで狙ったグラウンダーのシュートは、右ポストを叩いてゴールにはならなかった。

 0−1のまま迎えた後半34分、久保がMFがデジャゲレと交代してピッチへ。トップ下のポジションに入った。後半38分には、久保が森岡に対してスライディングでチェックに行き、ファールに。イエローカードをもらっている。

 後半41分、ペナルティエリア内に侵入したヘントのMFがフェルストラーテが倒されて、ヘントにPKが与えられる。キッカーは久保。PKから、久保が右足でゴール左に打ったシュートはGKに止められたが、こぼれたボールを久保が蹴り込んでゴールイン。0−2となり、試合を決めた。

 「完全に読まれていました」とはPKを蹴った久保。「PK練習してるんですけど、相手もなかなか。でも、乗って行けたら良いかなと思います」。自らキッカーを名乗り出て、監督とチームメイトからOKをもらってPKを蹴ったという。一度は阻まれながらも、ゴールを決めることに成功した。チーム内での厳しいポジション争いの最中にいるだけに、結果は重要だ。

 「攻撃の部分でもうちょっと自分らしさを出したいし。ポジションをちょっと失っている状況なので。もうちょっと出て、良いパフォーマンスができれば。もっと結果に繋がると思います」。

 ヘントは怪我人が戻ってきたことで選手層は厚くなると同時に、久保に限らずポジション争いが激しくなっている。

 「サイドハーフは固定ですけど。そこ以外はほとんど、中盤とかほんとにめちゃくちゃ人数がいるので。そこは結構チーム内でも厳しい争いになるかなと思います。今の監督は完全にトップ下も中盤と考えているので。そういう中盤扱いされる中でしっかりと守備もしないと。それも考えながらやらないとなと思います。 今日、出ていた選手(MFデジャゲレ)も点を取っているので。しばらく状況は変わらないと思いますけど。しっかり練習して、頑張ります」。

 一方、アンデルレヒトはホームながら敗北を喫したことで優勝が少し遠のいた。

 「優勝争いが厳しいというか。最初に勝っておきたいというのは、チームとしてはあると思います。でも、負けた時は10分の1と考えるようにします。勝った時は最初勝てたと思いますけど。まあ、考え方ですよ、あとの9試合、頑張ります」。

 両チーム主導権を握った時間帯はあった。どちらが勝ってもおかしくなかった試合だったが、終わってみれば、0−2。森岡に敗因を問うと「やっぱり、失点シーンは1失点目は、あの空気感の中で起こるようなプレーじゃなかったですし、もちろんその後のチャンスは僕がしっかり決め切るべきチャンスでした。そこかな」と答えた。

 プレーオフ1は上位6チームの総当たり戦。気の抜ける試合などはない。「これだけ緊張感のあるゲームというのを、あんまり経験したことがなかったんで」と森岡は言う。「1点の重みというのを、空気感で感じるというか。もちろんリーグ戦も1点は重いですけど。でも、なんかこの1試合に対する、選手たち、スタジアムの雰囲気とかっていうのが、今までと違うなっていうのは感じましたね」。

 とはいえ、まだ可能性がなくなったわけではない。

 「可能性がある限り1試合1試合、勝ちに行きますし。それこを(現在首位の)ブルージュがどうなるかわからないですし。やっぱり可能性があろうがなかろうが1試合1試合、勝ちには行きたいです。それは変わらず、ですね」。

 プレーオフ1最初の日本人対決は久保に軍配が上がった。この試合の結果で、アンデルレヒトとヘントは勝ち点で並び、得失点差でヘントが2位へと順位を上げた。プレーオフというシステム自体には今でも賛否両論ある。ただ、上位6チームで争われるリーグ戦は、毎試合がトップゲームだ。緊張感のある試合が連続することでベルギーのクラブ、そして各選手の競争力を高める効果を期待しているのだ。また、優勝だけに意味があるわけではない。2位になればチャンピオンズリーグ予備選出場権を得られるのだ。森岡と久保。ふたりの日本人選手は、優勝のタイトルに手を掛けることができるのか。来季、チャンピオンズリーグ出場権を勝ち取ることができるのか。そもそも、この時期の活躍はステップアップや、ワールド・カップに向けたアピールになる。彼らの将来にとって、重要な意味を持つプレーオフ1の熾烈な戦いは、あと9節続いていく。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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