【コラム】海外通信員

サンパオリが見込んだ3人の若手

[ 2018年2月23日 22:00 ]

 この原稿を書いている時点で、ワールドカップ開幕までおよそ4ヶ月。昨年6月にアルゼンチン代表監督に就任したばかりのホルヘ・サンパオリは、本大会までの限られた時間を有効に使うため、10月の予選終了直後から休む間もなく国内外の選手の視察に勤しみ、戦術とプレーのアイデアを共有するべく、機会があるごとに主力選手たちと個別のミーティングを行なっている。

 代表の番記者たちによると、ロシアに行く23人のメンバーのうち、サンパオリの頭の中にはすでに十数名の選手が出場確定となっているらしい。残された7〜8人の枠を最終的に誰が勝ち取るかは全くわからないが、国内でプレーする若手が何人か招集されるのだろうというのが大方の予想だ。

 サンパオリの契約はカタールで開催される2022年ワールドカップまでとなっている上、代表においてはユース世代の育成部門も含めた総指揮を任されていることからも、「ロシア大会後」を見据えたチーム作りを進めていても不思議ではない。むしろサンパオリは、予選落ちの危機に迫られた緊急事態の最中でバトンタッチした現在のチームより、ゼロからスタートできるカタール大会に向けたチーム作りの方に意義を見出しているのではないかという見方もある。実際にサンパオリは現在、国内のクラブでプレーする3人の若手に強い興味を抱いており、将来に向けた基盤作りのために彼らがロシア行きのメンバーに選ばれる可能性が示唆されている。

 サンパオリが見込んだ若手3人のうち、1人はすでに11月に行なわれた親善試合でプレーしている。ボカ・ジュニオルス所属のFWクリスティアン・パボンがそうだ。

 パボンは96年生まれの22歳。17歳のとき、当時2部リーグに参戦していたタジェレス・デ・コルドバでデビューして以来、俊足のウィングとして注目を集め、U17、U20、リオ五輪代表を経て、2015年1月からボカでプレー。ゴール前でのミスが目立ったために当初はサポーターから厳しい視線を注がれていたが、ロドルフォ・アルアバレーナ前監督、そしてギジェルモ・バロスケロット現監督から絶大な信頼を寄せられて出場機会を重ね続け、現在は不動のレギュラーとしてリーグ戦首位独走の立役者となっている。

 素早い攻め上がりからタイミングの良いクロスを送り、相手の固い守備を崩して決定的なチャンスを作ることのできる人材として11月の親善試合でA代表入りを果たし、ロシア戦では後半途中に交代出場してから6分後に唯一の得点となったセルヒオ・アグエロによるゴールをアシスト。続くナイジェリア戦では先発メンバーとして出場し、ここでもゴール前中央に攻め上がったアグエロの足元にぴったりと合わせるラストパスを出して得点に貢献。メッシからもプレーを絶賛され、2試合を通してサンパオリ監督の期待に十分応えるパフォーマンスを見せた。

 もう1人のファブリシオ・ブストスはパボンと同じ96年生まれで、インデペンディエンテ所属の右SB。U17代表のレギュラーとして2013年のU17南米選手権に出場し、スピードに乗った効果的な攻撃参加ができる選手として、欧州のクラブから同大会の視察に訪れていたスカウト担当者たちから注目を浴びた。インデペンディエンテでは11歳のときからプレーし続け、2016年12月、当時の監督だったガブリエル・ミリートによってプロデビュー。リーグ戦でのプレーがサンパオリ監督からも評価され、昨年8月のW杯予選2戦のためA代表に召集されたが、直前の怪我から出場には至っていない。

 人材不足が不安視される右SBの控え要員としてサンパオリ監督がブストスにかける期待は大きく、ロシア大会を逃しても次のカタール大会に向けたチームのベースになることはほぼ間違いない。

 3人目は現在アルゼンチン国内で最も話題となっているラシン所属のFWラウタロ・マルティネス。97年8月22日生まれの20歳で、優れたボールコントロールとシュート技術、キック力が評価されるストライカーだ。

 地方のクラブに所属していた14歳の時、スカウトされてラシンに入団し、その後下部リーグでゴールを量産。18歳でU20代表に召集され、スペイン遠征の際にレアル・マドリードとビジャレアルからオファーを受けたが、「まずはラシンで結果を出したい」という理由で移籍の誘いを拒否したことはスペインの一部メディアの間でもちょっとした話題となった。

 その後も昨年のU20南米選手権で5得点をマークする活躍を見せただけでなく、ラシンでも大先輩ディエゴ・ミリートの後継者として得点を重ね、サンパオリ監督もその得点力と順応性の高さを絶賛。今年に入ってからレアル・マドリードやアトレティコ・マドリードが獲得に興味を示したが、アルゼンチン国内のメディアによると、4000万ドルの移籍金でインテル入団が決定したと報じられている。

 最終節のメッシによるハットトリックでかろうじて予選を通過したアルゼンチン代表。W杯本大会に向けた国民の期待度が低いのは当然の結果かもしれないが、将来が楽しみな若手の実力派が揃っていることは確かな事実。サンパオリ監督がロシア大会までにどの選手を選び、どのようなチームでどんなゲームプランを準備し、いかにして次のカタール大会につなげるかに着目したい。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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