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【コラム】海外通信員

久保裕也に求められるゴール 今季いまだ勝利のないヘント

[ 2017年9月7日 07:00 ]

日本代表練習でシュートを放つ久保(右)
Photo By スポニチ

 久保裕也が所属するベルギーのヘントが苦境に立っている。

 リーグ戦5試合を終えて0勝2分け3敗。ベルギーリーグ全16チーム中15位に沈んでいる。

 ヘントは昨季もリーグ前半に苦しんだ。だが、冬の移籍市場で久保やGKロフレ・カリニッチ、ウインガーのサムエル・カルーを獲得しチームを補強。彼らの活躍で巻き返し、最終的に3位に順位を上げた。

 今季はファンハーゼブルーク監督との契約を延長。リーグ優勝とヨーロッパリーグで上位進出を目標に掲げた。ヘントは14〜15シーズンにリーグ優勝、昨季はヨーロッパリーグでグループリーグを突破している。簡単ではないが、非現実的な目標ではない。目標達成のために補強にも積極的に動いていた。ところが、ヨーロッパリーグ予備選3回戦でオーストリアのSCRアルタッハに第1戦1−1、第2戦1−3で敗れた。今季開幕早々に大きな目標のひとつを失ってしまったのだ。このあたりから歯車が完全に噛み合わなくなった。

 リーグ戦も開幕から2連敗。第3戦のメヘレン戦で1−1の引き分けで勝ち点1を得た。しかし、第4戦のムスクロン戦では前半で2−0とリードしながら、前半終了間際に退場者を出し、後半に3失点して逆転負けした。

 この間、久保もまた沈黙していた。

 今季開幕直後は6月の日本代表の試合で負ったケガが完治せず、右足の膝から太ももにかけてサポーターを付けてプレーしていた。

 8月26日のヨーロッパリーグ予備選3回戦第1戦アルタッハ戦のあと、「自分としてはケガ明けで90分やれたのはポジティブでした」とコメントしていた。

 「代表でケガをして、(治るのに)3〜4週間くらい掛かっていたので、(クラブチームへの)合流もちょっと遅れていました。段々良くなってきて。もうちょっとしたらテーピングも全部外れるかなというくらいなので。そういう意味ではポジティブに捉えています。でも、自分としてはきょうも内容はあまり良くなかった。もうちょっと自分の体的にもシャープに動きたいし、ちょっと重いかなという感じもありました。これから試合を重ねるごとにもっと上がっていけばいいかなと思います」

 久保のコンディション自体は試合を経るごとに上がっていった。プレーのキレは増し、シャープなプレーからのシュートも見せるようになっていた。しかし、ゴールが決まらない。8月20日のムスクロン戦では、スタメン出場するも退場者が出たことで後半は交代してベンチに下がった。アタッカーを一人削って守備的な選手を入れるという戦術的な理由だった。

 「戦術的な理由ですけど、多分、僕が決めていたら代えられなかった。やっぱり決めきれないところが、こういう交代にも影響するでしょうし。でも、切り替えてやっていくしかないです」

 ベルギー人の記者からも、ゴールを決めることができなかったとこに責任を感じるか、という質問が飛んでいた。

 「もちろんあります。フォワードとしてそこを決めるのと決めないのとじゃ、全然違うので。チームに、そういう部分で貢献できていないかな、と思います」

 久保はしっかりとした口調で答えていた。

 そして8月27日の第5節、ホームで迎えたアンデルレヒト戦では、久保はスタメンを外れた。試合はヘントが支配する時間帯が多かったにもかかわらず、勝ちきれずに0−0でタイムアップ。試合終了の笛が鳴った直後には、シラーっとした静かで気まずい空気がスタジアムを包んだ。

 ファンハーゼブルーク監督のサッカーは3−4−3と4−2−3−1を併用する攻撃的なサッカーだ。チームに落とし込むには少々難しい、ややこしいもので、チーム作り自体に時間が掛かっているという側面はあるだろう。久保も「いろんなことをチーム自体試している。3−4−3や、きょうは4−2−3−1だったり。選手も代りながらやってる。ポジションも変わってやっていて、いろいろ試している。その中で勝ち切れないというのは、多分、運もないでしょうし。フォワードの選手、僕らが決め切ればというところもあるでしょうし。僕はそこに尽きるかなと思っています」とムスクロン戦の後に言っていた。

 補強を進めたのはいいが、新しい選手たちが入ったチームに戦術が十分に浸透していない。そんな中で、守りきれず、決めきれない。結果、今シーズン、ヘントはいまだ勝利を手にすることが出来ていない。このタイミングで迎えたインターナショナルウィークはヘントにとっては重要なインターバルとなる。苦境を迎えているヘントは巻き返していくことができるのか。久保にはチームを救うゴールが期待される。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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