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【コラム】海外通信員

終盤に調子上向き 悲願のCL制覇を狙うアトレチコ

[ 2017年4月30日 18:00 ]

 14年は後半アディショナルタイム3分にセルヒオ・ラモスのゴールで同点に追いつかれ、延長戦に敗戦。16年はPK戦で、フアンフランがシュートをポストに当てて敗戦。アトレティコ・マドリードは3年間で2回、そのどちらも宿敵レアル・マドリードを相手にチャンピオンズリーグ(CL)決勝を戦い、いずれも悲劇的な形で優勝を逃した。

 3月中旬のインターナショナルウィーク、アトレティコを率いるシメオネはスペインのラジオ局『オンダ・セロ』の番組エル・トランシストールのインタビューに応じ、二度も自分の手元からこぼれたCLについてこう語っていた。

 「ミラノ(3回目のCL決勝の舞台)で起こったことは、私にとって失敗だった。失敗というのは目標に到達できないことであり、CL優勝は私の目標だった。それに勝てなかったのはとても辛く、辛すぎた。私はその大会のアンセムを聞くときに痛みを感じている」

 ミラノでの試合後会見で、「これからどうするかは分からない。考えなければ」と去就を不透明にしたシメオネ。しかし、この男は今季もアトレティコの手綱を握り、心を容赦なく傷をつけるアンセムを耳にしながら、再び決勝へと続くCLの道程を歩んでいる。そうして現在立っている地点は、準決勝。同ラウンドで対戦する相手は、レアル・マドリードだ。

 今季のアトレティコは順風満帆とは言えなかった。シーズン前半戦、ボランチのポジションでコケを起用し、サイドハーフと最前線に4人のアタッカーを並べるなどより攻撃に比重を傾けたが、チームの最大の長所である堅守に穴を空けられることも目立った。リーガエスパニョーラでCLストレートイン圏内の3位にも入れないなど、シメオネ政権下において最悪の時期を過ごした。

 「他チームはプレッシャーが強くなるシーズンの後半戦から勢いを付ける。だからこそ前半戦から全力でいけば優位に立てる」。シメオネのアトレティコはその考えの下、フルスロットルでシーズンをスタートさせることを常としていたが、今季は前半戦でつまずいた。

 けれども今季のアトレティコは、終盤に入るにつれて尻上がりに調子を上げていった。その理由は、本来の自分たちの姿、堅守速攻の形を取り戻したこと。ここ12試合の成績は8勝4分けと負けなしで、しかも4失点しか許していない。攻撃ではかつてラダメル・ファルカオ、ジエゴ・コスタがそうしたように、グリエズマンが得点力を支えている。

 シメオネは語る。「17年から、昨年末とは異なる道を歩んでいる。良い守備を見せ、チームとして働き、そうして試合に勝利する状況を生み出す。その考えから離れてはならない」どうやら、自分たちの在り方を改めて確認したようだ。

 リーガでは、一時期勝ち点9差をつけられていたセビージャから3位の座を取り戻すことに成功したアトレティコ。CLでは、3度目の正直を実現できるのだろうか。まずは、レアル・マドリードとの準決勝だ。「フットボールにリベンジなどない。あるのは新たなチャンスだけ」と話すシメオネは、胸に痛みを伴いながらも、希望を、ビッグイヤーを掲げる瞬間を今もまだ追い続けている。「パルティード・ア・パルティード(1試合、1試合)」の哲学を忘れることなく、一歩、また一歩と踏みしめながら。(江間慎一郎=マドリード通信員)

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