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【コラム】海外通信員

ロシアまでの遠い道のり モウリーニョ「南米予選は刺激的で本物の競争」

[ 2017年4月8日 06:00 ]

5日セビリア戦で2ゴールを決めたバルセロナのFWメッシ
Photo By AP

 2年間にわたってホーム&アウェーの総当たり戦で行なわれる長丁場のワールドカップ南米地区予選も、残すところあと4節。先日、ESPNブラジルによるインタビューでジョゼ・モウリーニョが「欧州の予選は退屈だが、それに比べて南米予選は刺激的で本物の競争」と語ったとおり、毎回、強豪と呼ばれる国も苦戦を強いられる過酷でエキサイティングな戦いとして知られる。今回も、チッチ監督の就任以来8戦全勝という圧倒的な強さでさっさと予選通過を決めてしまったブラジルを除き、2位から8位までの7カ国が僅少差でひしめき合っており、最終節まで劇的で熾烈な争いが繰り広げられることが予想される。

 現時点(第14節終了時点)では、とにかく「混戦」という言葉を説明するのに最適な状況になっている。コロンビアは勝点を24として2位につけているが、得失点差では勝点23で3位のウルグアイを下回る(コロンビア3点、ウルグアイ9点)。そのウルグアイは、序盤こそ好調の波に乗って安泰だったのが、今では勝点でチリに追いつかれてしまった。プレーオフ圏の5位に甘んじるアルゼンチンは、6位のエクアドルに勝点で2点差をつけているものの、得失点差はわずか1点。欧州の主要リーグで活躍するFW陣を抱えながら、総得点数は14試合で15点、10カ国中8位という不振ぶり。勝点18で7位と8位につけるペルーとパラグアイが希望の糸をつなぐのは、決して夢物語ではない。まして、ここに来てアルゼンチンがエースのリオネル・メッシを欠くという予期せぬハンデを負うことになったため、終盤でのどんでん返しも大いにありうる。

 さて、そのアルゼンチン。昨年から代表チーム周辺では、メッシが突然引退を宣言したり、ヘラルド・マルティーノが監督を突如辞任したり、後任としてエドガルド・バウサが慌しく就任したりとハプニングが続いたが、予選のこの段階でメッシに下された4試合の出場停止処分は、一連のドタバタ劇を集約したかのような衝撃とインパクトを与えた。

 AFA(アルゼンチンサッカー協会)は処分が出された翌々日にFIFA上訴委員会に対して異議申し立てを行ない、メッシ自身もすでに弁明書を提出している。スポーツ界の法律に精通する国内のメディアは、処分が4試合から2試合に軽減されるだろうと予測しているが、例えそれが実現したとしても、メッシは次のウルグアイ戦に出場できない。アルゼンチンとしては、最終節に標高2850メートルの高地キトで行なわれるエクアドル戦の前に予選通過を決めたいため、ウルグアイ戦での勝利は必須。メッシ不在のチームでウルグアイに勝つことは、現状のままでは不可能と考える人が多く、その証拠として国内のスポーツ紙OLEが行なった読者アンケートで、58000人に及ぶ回答者の80%が「バウサ監督は退任すべき」と答えている。

 バウサ監督はこれまで代表監督として予選の8試合で指揮をとったが、戦術や采配、選手の選考において不可解な点が多く、人々の間で不満が募っていた中、第13節のチリ戦では不甲斐ないプレーで勝利をおさめたチームを「素晴らしいプレーだった、10点満点だ」と評価してしまったことで、国民の怒りが最高潮に達してしまった。

 しかし、監督交代を望む声が圧倒的に多いものの、新しい監督と契約することはそれほど容易なことではない。3月29日にクラウディオ・タピアが新会長に就任したばかりのAFAは、新しい役員たちが再建に向けて一丸となっているところだが、もし実際に監督を交代させるとすれば、バウサ監督との契約解除金、及び新監督の契約金(プラス現在所属しているクラブに支払う違約金)を調達しなければならなくなる。2月にストの原因となった「選手への給与滞納」を解決すべく、一部のクラブが抱える多額の借金の返済を約束したばかりのAFAとしては、この時期の多額の支出はできるだけ避けたいに違いない。

 バウサ自身も「辞めろと言われれば黙って去るが、誰からも強制されない限りは(代表監督を)続けるエネルギーはあるし、選手たちも支持してくれている」と語っており、現時点では続投なのか退任なのか、予選の行方同様に先が全く見えない状態なのである。

 ロシアまでの長く遠く、険しい道のり。ブラジルに続いて本大会行きの切符を手に入れるのはどの国なのか。モウリーニョの言う「本物の競争」の続きは8月31日だ。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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