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【コラム】海外通信員

吉田麻也 リーグ杯ベストイレブン選出で英国での分岐点となるか

[ 2017年3月3日 06:00 ]

イングランド・リーグ杯決勝   サウサンプトン2―3マンチェスターU ( 2017年2月26日    ロンドン・ウェンブリースタジアム )

リーグ杯決勝で競り合うサウサンプトンDF吉田麻也(左)とマンチェスターUFWラシュフォード
Photo By スポニチ

 イングランドリーグ杯の決勝が2月26日、ロンドンのウェンブリースタジアムで行われ、日本代表DF吉田麻也が所属するサウサンプトンは、マンチェスター・ユナイテッドに2―3で惜しくも敗れた。

 国内リーグ杯といえば、それほど重要度が高くないと一般的には思われがちだ。しかしながらファイナルはファイナルである。勝てば歴史に名が残り、負ければ人々の記憶から消えていってしまう。タイトルがかかる一戦、準決勝まで若手選手に出場機会を与えるチームもあるが、決勝戦となると話は別となる。

 8万5千人の超満員のスタジアムは、すでに試合前から両チームのサポーターによる熱気にあふれていた。サウサンプトンの対戦相手には、イブラヒモビッチとポグバという世界最強の敵がかまえていた。

 試合開始直後、吉田とイブラヒモビッチが激しく競り合う。ディフェンダーは相手ストライカーとの最初のコンタクトであいさつ代わりに激しくぶつかって相手を怯ませることがあるが、「こっちから先にいこうと思っていたが、向こうから来た」と吉田本人が語るように、この日の最初の競り合いでは明らかにイブラヒモビッチがファール覚悟で仕掛けてきた。しびれる舞台の幕開けであった。

 吉田にとっては、2012年のロンドン五輪の準決勝以来のウェンブリースタジアムでの2度目のプレー。あれから4年半の時が流れた。サウサンプトンでは、毎シーズンビッグクラブへの引き抜かれていくチームメイトとの先発の座を奪いきることはできず、3番手として後塵を拝してきた。

 今シーズンの前半戦もポルトガル代表フォンテとオランダ代表のファンダイクの控えだったが、ヨーロッパリーグと国内リーグ杯では安定したパフォーマンスを残し監督の信頼を確実に得てきた。

 今年に入ると状況が一変した。主将のフォンテがウェストハムに移籍、ファンダイクがケガで欠場すると、DFリーダーとしての吉田の姿があった。リーグ杯のアーセナル戦では攻守においてチームを牽引、準決勝のリヴァプール戦ではほとんど相手にさせたいプレーさせることはなかった。

 アーセナルとのリーグ杯勝利後に吉田本人が口にしていた「プレーしていて本当に楽しかった。」という充実感は、決勝でも失われることなく身体のキレはさらに増しているように見えた。

 結果的にチームとして3失点を喫してしまったため、守備陣全体の責任は問われるだろう。しかしながら、吉田個人としては局面でのイブラヒモビッチとの戦いでは集中力が途切れることなく自信に溢れピッチ上で躍動していた。

 プロ初タイトルにはあと一歩届かなかったが、リーグ杯全試合に出場した吉田は大会ベストイレブンに選出された。チームとして、そして個人として決勝のようなパフォーマンスをプレミアリーグにおいても維持できれば、さらなる結果は自ずとついてくるだろう。

 この大会でベストイレブンとしてプレーできた自信を5月までの後半戦においてどれだけ結果として示すことができるか。それが英国での今後のキャリアを左右するだろう。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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