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【コラム】海外通信員

14年W杯、16年五輪 開催競技場
誰か聖地マラカナンスタジアム買いませんか?

[ 2017年2月12日 07:00 ]

管理をしていないため、ぼろぼろになったマラカナンスタジアムの芝
Photo By AP

 飛行機でリオ・デ・ジャネイロに降り立つ時、我々は大きな口を開けたような巨大建築物、マラカナンスタジアムを見下ろす。1950年の第4回W杯ブラジル大会のために建設され、ロンドンのウェンブリーと並ぶサッカーの聖地として君臨してきた。まさかの敗戦に沈んだ『マラカナンの悲劇』の舞台であり、2014年W杯ブラジル大会の決勝戦、そしてリオ五輪の開会式、閉会式、サッカー決勝の舞台にもなった。

 マラカナンの悲劇の時の観客数は20万人。その後、安全規定により収容人数は8万人になっているが常にブラジルサッカー界の中心であり、どの選手も一度はプレーしたい憧れの聖地である

 そんなサッカー王国にとっての誇りであるマラカナンが大変なことになっている。2013年、ブラジルの超大手建設会社オデブレシェが入札により運営権を年間約20億円、35年間契約を締結した。オデブレッシェはW杯と五輪のための改修も請け負い、その金額は約500億円。2016年3月に改修は終了し、リオ五輪委員会に引き渡された。その後、12月まではリオ五輪委員会の管理下に置かれることになっていた。五輪とパラリンピックが終了して、五輪委員会は元の状態に戻しての本来の管理会社であるオデブレッシェに引き渡しとなっていた。が、メンテナンスが元の状態になっていないことを理由に返却を拒否。

 現在、オデブレッシはブラジル中を揺るがす汚職事件の中心企業で、取り調べの真っ最中。W杯ブラジル大会では4カ所のスタジアム建設に関わり、政府との水増し請求、キックバックなどの収賄行為について取り調べの真っ最中だ。スタジアムの管理運営を放棄して電気代も支払わず、借金は約62億円にふくれあがった。

 1月にはついに送電停止の処分を受けてしまった。管理不行き届きのため警備もおろそかになった。マラカナンの正式名である『ジャーナリスト・マリオ・フィーリョ』の胸像や液晶モニターが盗まれたりと、治安も悪くなっている。

 芝生は五輪後に張り替え、4試合ブラジルリーグの試合が行われたが、その後は管理をしていないためはぼろぼろ。天井がはがれたり、いすが壊れたりとコンディションは悪くなるばかりだ。

 こんな状態のため、1月に行われた昨年飛行機事故で亡くなったパシェコエンセのためのチャリティー親善試合、ブラジル対コロンビア戦(A代表)はマラカナンではなく、五輪スタジアムだったニウトン・サントススタジアムで行われた。

 リオ地方裁判所はオデブレッシェに返還を受ける義務があり、一日に約700万円の罰金を科す判決を下したが、反論している。州政府は業を煮やし、再入札をすることにした。手を挙げたのは、フランスの会社ラガルデヒは世界有数のスタジアム運営会社で、ブラジル国内で2カ所、世界で50カ所を運営管理している経験豊富なところがメリット。

 もう一つはマラカナンをホームスタジアムとして使用するフラメンゴが推すGL社。ラガルデヒ社の方がスタジアム管理のノウハウという意味で有利だが、フラメンゴがGL社以外とは一緒に仕事をしたくないと言い、簡単には決まらなさそうだ。

 五輪レガシーとは市民に五輪の良い遺産を残すことのはずが、元々あった素晴らしい遺産の価値を貶めるようなレガシーはあってはならない。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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