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【コラム】海外通信員

Jリーグコーチが巡る英国フットボールの旅

[ 2017年1月12日 21:14 ]

 世界中のリーグが一息つく中、英国プレミアリーグだけがシーズンを中断しない期間がある。ボクシングデーと言われるクリスマス翌日の12月26日からはじまる過密スケジュールは選手やスタッフにとっては正念場であるが、ファンにとっては至福の時であり、世界中から多くのサッカー関係者や観光客が集まる。

 昨シーズンまで徳島ヴォルティスの監督(来シーズンからはFC岐阜のヘッドコーチに就任)を務めた長島裕明氏はJリーグのオフの期間を利用しながら、スペイン、ポルトガル、イギリスなどで欧州の国々に滞在しながらフットボールの旅を10年間継続している。自ら旅費を負担して行う旅の狙いと真意を聞いた。

 「きっかけは2006年のS級海外研修です。元々、旅行が好きだったのですが、10年前からオフになるとスペインやポルトガルの特色ある地域のクラブチームにて一週間ほどコーチング研修を行い、その後12月末にプレミアリーグの試合観戦するのが主なコースです」

 英国滞在中は、プレミアリーグ観戦を始め、練習見学、スタジアムツアー、FAが創立された歴史的なパブや、フットボール博物館など、フットボールに所縁がある各地を廻っている。長島氏はピッチ上の戦術眼だけでなく、フットボールの歴史への造詣が深く、言い方を変えればオタクに近い部分があるかもしれないが、150年近く培ってきた英国フットボールの歴史を非常にリスペクトしている。

 「アーセナルのスタジアムツアーをして感じたことは、ベンゲル監督は非常に素晴らしい功績を残しているのだけれど、やはりチャップマンこそがアーセナルの伝説だなぁと。当時の最先端フォーメーションのWMシステムを開発、ユニフォームに背番号をいれたり、ナイターで試合をしたりと型破りのことを実践した監督。その偉大なる功績を称えて、現在のスタジアムを一番綺麗に眺める地点に銅像が置かれているのですが、そこに歴史の繋がりや重みを感じます」

 長島氏は、これまでにFC東京の育成年代のコーチを務め、数々のJリーガーを育てあげ、その後ヘッドコーチとしてFC東京、山形、徳島などのJ1昇格に貢献するなど日本サッカー界の第一線を常に走り続けている。オフの期間は仕事から少し距離を置きたいという人もいる中で、個人的な活動として欧州フットボールの歴史と最先端とに実直に向き合いつづけている。

 10回目を迎えた旅の目的は何なのかという質問に対しては、壮大な答えではなく、フットボールへの情熱溢れながらも肩肘を張っていない率直な言葉が返ってきた。

 「この旅が仕事に活かされているかどうかと問われれば、毎シーズン必ずどこかで活きているとは思いますが、旅自体に明確な目的は特にありません。もちろんオフなので観光もするし、趣味に近い感覚です。誤解を恐れずにいうと、サッカーに対する気持ちはずっと変わっていなくて、好きなこと、趣味の延長でこれまでやってきました。努力は趣味に勝てないのではないではないかと思っており、何事も続けていくことが大事だと思って10年目です」

 フットボールの旅で充電したエネルギーは、FC岐阜でのJ1昇格の挑戦に費やす。長島ヘッドコーチが所属するクラブがJ1昇格を達成すれば、小林伸二監督に並ぶ歴代最多4クラブ目の昇格となる。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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