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浦和・槙野 劇的決勝弾!史上最多タイ8度目天皇杯が置き土産

[ 2021年12月20日 05:30 ]

第101回天皇杯決勝   浦和2―1大分 ( 2021年12月19日    国立 )

<浦和・大分>試合終了間際、決勝ゴールを決め駆けだす浦和・槙野(5)
Photo By 共同

 浦和が大分を2―1で下し、3大会ぶりに、史上最多タイとなる8度目の優勝(前身の三菱重工時代を含む)を飾った。前半6分にMF江坂任(あたる、29)が先制。後半45分に追いつかれたが、同アディショナルタイムに今季限りで退団するDF槙野智章(34)が劇的な決勝点を決めた。引退する元日本代表MF阿部勇樹(40)の花道を飾ったチームは、準優勝した19年以来となる来季のACL出場権を手にした。

 どうしたら赤く染まった国立の、この空気を最大限に味わえるだろうか。突き刺さるヘッド弾を見届けた槙野は両手を広げ、ゴール裏へ走った。「今後もレッズの槙野、5番を忘れてほしくなかった」。警告も覚悟の上でユニホームを脱ぎ「5」を掲げた。次々と選手が駆け寄る。涙と笑顔が入り交じった歓喜の輪ができた。

 まるで映画のフィナーレ。1―0の後半38分に投入されるとGK西川から主将マークを託された。5バックに変更し、無失点で終えるはずが、同45分に同点弾を食らう。残り5分の表示。延長に持ち込むか、勝負に出るか――。槙野は「周ちゃん、どうする?」と問うた。西川は「マキが点を取って終わらせろ。最後、持っていけ!」と答えた。それだけで十分だった。

 CKの流れから柴戸がシュートを狙う。DFより先にポジションを取った槙野が寸分狂わずコースを変えた。日課となった居残りのシュート練習は柴戸も仲間の一人だ。「入らないと思って。癖は分かってますから」と槙野は笑った。加入初年の12年、最終節の名古屋戦で直接FKを決めてACLへ導いた「浦和の漢(おとこ)」が最後の試合でもアジアへの切符をもたらした。

 先月5日、突然の「契約満了」通告に絶句した。スーパーポジティブな槙野が3週間、毎日泣いた。在籍10年の日々が走馬灯のようによみがえる。「勝利の後、全員でWe are Diamondsを歌おう」と発案すると「よそもんが勝手なことするな」と叩かれたことも。発信力の強さから誤解されることも多いが、全身全霊をレッズにささげてきた自負がある。信念は曲げなかった。

 準決勝では同じく今季限りで去る宇賀神が先制点を決めた。迎えた決勝。お祭り男の血は騒いだ。「残された時間で何ができるか。残り10分を槙野劇場にしたい」。それを有言実行できるのも槙野たるゆえん。浦和で引退する夢はかなわず来季は神戸に移籍が決定的だ。3カ年計画の3年目、リーグ優勝を掲げる22年は後輩に託す。

 最後は6万観衆へ「後押ししていただき、本当にありがとうございました。来季、僕はいませんが、今いる選手たちに素晴らしい後押しをお願いします」。とびきりの笑顔。目元にはきらり、涙が光っていた。(波多野 詩菜)

 ≪コロナでも最多 5万7785人≫浦和が8度目の天皇杯制覇。優勝8度は慶応BRB(全慶応)と並ぶ歴代最多タイ。J創設の92年以降では4度目で、鹿島の5度に次ぎ、G大阪と並び2位タイ。観衆は5万7785人。実数発表となった93年度以降の天皇杯決勝では、19年度の5万7597人を上回り最多。コロナ下の主な国内スポーツでも最多。従来はサッカーが12日天皇杯準決勝、浦和―C大阪戦(埼玉スタジアム)の3万933人、プロ野球では昨年11月8日の巨人―ヤクルト戦(東京ドーム)の3万1735人が最多だった。

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