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Jリーグが直面した課題

[ 2021年5月29日 09:30 ]

Jリーグ

 【大西純一の真相・深層】まもなく5月が終わる。Jリーグはほぼ予定通りに日程の3分の1を消化しているが、新たな課題が見えてきた。「以前ほどJリーグの試合が、わくわくしない」という声が聞こえてくる。

 コロナ禍で昨年は多くのクラブが春に1カ月以上、活動休止を余儀なくされた。7月に再開された後は、真夏に週2試合の過密日程が続いた。湘南の浮嶋敏監督は「運動生理学上、サッカーは中2日で試合を続けるには無理がある」といっていたが、中2日、中3日では、選手はコンディションの整えるのが精いっぱい。選手個々がうまくなるための練習やチームの連係を深める練習の時間が割けなかった。さらに昨季も今季も故障する選手が多く、選手層が厚くないチームはケガを抱える選手を無理して使わなければならないこともあった。審判がコンタクトプレーに対して、あまりファウルを取らなくなったことも重なった。試合をエキサイティングにする狙いだが、その分ケガのリスクも高くなった。疲労とケガで選手のパフォーマンスが落ちれば、試合の質も落ちてしまう。

 1993年にJリーグが開幕したときは毎週水曜日と土曜日に試合が行われた。10チームが2回戦総当たりの2ステージ制、各チーム年間36試合、しかも引き分けなしで延長戦、PK戦まであった。さらにナビスコカップや天皇杯もあった。94年は12チーム、95年は14チームで2ステージ制だった。当時はベストメンバー規定というものがあり、ターンオーバーができず、主力選手は年間50試合ぐらい出場した。「真剣勝負の試合をたくさんしなければ、強くならない」という考えだった。それが日本代表の強化につながり、98年W杯の初出場につながった。

 だが、当時といまでは選手のレベルもリーグのレベルも違う。たくさん試合をすることが必ずしもうまくなったり、強くなる近道でもなくなった。レベルによって強化の仕方が違ってくるのは当然だろう。もちろん観客の目もこえて、応援しているチームの勝敗だけでなく、試合の質も求めている。内容に欠ける試合が続くと、スタジアムから離れてしまう危険性もある。この先も過密日程は続く。新型コロナウイルス感染症が終息し、以前の状態に戻ったとき、どういう試合を見せられるかが一番重要なことだろう。コロナ禍が終わったときのことを考える余裕はないかもしれないが、逆にいまこそ、先のことを考えてほしい。

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2021年5月29日のニュース