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敬われ、いじられ、愛される…J1最年長の鹿島GK曽ケ端が40歳に

[ 2019年8月3日 14:25 ]

40歳を迎えたこの日、練習でシュートをブロックするGK曽ケ端
Photo By スポニチ

 J1最年長の守護神は、びしょ濡れだった。練習を締める最後の円陣が解かれた瞬間が、祝福の合図。事前に打ち合わせしていたチームメートたちが取り囲んで、一斉に手元の水を噴射した。親子ほど年の離れた選手も、容赦なくふりかける。ただそこはGK。曽ケ端はすぐさま手元のボールを拾い、投げて反撃し始めた。

 「俺は止めようって言ったんだけどね!」。計画の“首謀者”を後輩のDF犬飼らに仕立てようとするMF遠藤の冗談が大きく響く。グラウンドは笑い声に包まれた。

 8月2日は曽ケ端準の40歳の誕生日。元日本代表MF中村俊輔が先月J1磐田からJ2横浜FCに移籍したことにより、J1最年長となった守護神が、節目の時を迎えた。

 「ほんとに40歳なんですね」。報道陣から贈られたケーキについている「4」と「0」の飾りロウソクを目にして、少し笑いながらつぶやいた。「プロに入った時は30歳くらいまで(現役を)できればとイメージはしていましたけど、それが今では40歳ですから。いろんな人の助けがないとできないことですし、感謝しかない」。改めて、噛みしめるように振り返った。

 鹿島では、年初めに鹿島神宮へ奉納する巨大絵馬がある。そこに守護神は今年も、毎年綴る2つの目標を書いていた。

 「全試合フル出場」
 「優勝」

 一つがかなわない状況でも、残りの一つに全力を注ぐ日々を送っている。控えに回った7月31日の浦和戦では、給水タイムにベンチを飛び出してセンターバックの犬飼に助言をする姿があった。この日も、翌3日の湘南戦に向けたセットプレー練習の合間に正GK權純泰クォンスンテの横に立ち、身振り手振りで意見を交換し合う姿があった。

 「何歳になってもチームが優勝するためにというのは変わりないですし、それはプロになった時から変わりないです」。ケガをしない。毎日グラウンドに立ち続ける。当たり前でも難しい継続を大切にする姿からも、後輩たちはプロとは何かを感じ取っていく。

 「評価とか、しちゃだめです」。大岩監督はこの日、そう切り出してから評価の対象にできないほどの存在の大きさを語り始めた。「彼はいるだけでね、うちのクラブの全てを体現してくれる。選手みんなが頼りにしている。ああいう風に(練習の最後に)やられるのも彼のキャラクター。偉そうにしないとかね、全て彼が体現してくれていると思う」。

 心から尊敬され、時にはいじられもする。希有な存在の守護神は、先に現役を引退した同期の同級生からも愛されている。元日本代表MF中田浩二CROには、朝からお祝いの言葉を掛けられたという。「45歳、おめでとう」と。

 Jリーグが開幕した1993年、クラブの礎を築いたジーコ氏(現テクニカルディレクター)は40歳だった。プロ22年目の今、同じ年齢に差し掛かった。「ジーコは40の歳に開幕戦でハットトリックしている。もちろん40歳になるまでの実績も全然違いますけど、40歳という年を鹿島で迎えられたのは凄く幸せなこと。またここから、どこまで続くかわからないですけど、1日1日大切にやっていければなと」。ゴールも鹿島らしさも、まだまだ曽ケ端によって守られ続けていく。(記者コラム・波多野 詩菜)

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