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多摩川クラシコ完敗を一生忘れない…FC東京ルーキー渡辺剛の覚悟「その声を見返す気持ちで」

[ 2019年7月15日 17:56 ]

多摩川クラシコで完敗したFC東京(撮影・篠原岳夫)
Photo By スポニチ

 ピッチを濡らした雨はあがっていた。カクテル光線に照らされ、晴れ渡った空のようなライトブルーが味の素スタジアムのアウェー側のゴール裏スタンドで揺れている。FC東京のDF渡辺剛(22)は、その景色を目に焼き付けていた。

 「たぶん、一生忘れないと思います」

 7月14日に行われた川崎F戦。0―3と完敗を喫した“多摩川クラシコ”を胸に刻んだ。

 4万2401人を飲み込んだホームで、首位の自信は打ち砕かれた。一夜明けた15日、渡辺は「受け止めないといけない」と静かに、だが、力のこもった言葉を紡いだ。もう第3センターバックではない。元日本代表DF森重真人(32)とコンビを組んできた元韓国代表DF張賢秀(チャン・ヒョンス、27)が13日にサウジアラビアのアルヒラルに移籍。ルーキーDFの名前がメンバー表のスタメンの欄に載るようになった。最終ラインで声を出し、怖れずに体を張り、堅守の要となる必要がある。

 「サポーターの中には『ヒョンスさんがいなくなってどうなるんだろう』『まだあいつじゃ無理だよね』と思う人もいるはずです。でも、その声に負けていたらこの先やっていけない。見返す気持ちでやっていきたい。力がないのは分かっているので、しっかりと受け止めて、日々の練習で努力して埋めていく。そうじゃないと、FC東京を担う選手にはなれない」

 背番号32の覚悟は決まっていた。「心のどこかで誰かに助けてもらえれば」という、プロ入り当初の考えも捨て去った。ルヴァン杯で経験を積み、メンタル面の成長を実感。今は敗戦を自分の責任だと受け止め、勝たなければ先はないという気持ちで臨めている。

 「いつでも試合に臨める準備をしていますし、いざ大舞台に立った時にも焦らずにプレーできる精神力の強さが養われました。だから(J1デビュー戦となった4月28日の)松本戦では、なんとかチャンスを掴まないといけないという中でいいプレーをできたんだと思います」

 中央大卒のプロ1年目。19節を消化して6試合(533分)0得点。力強く空中に舞い上がり、迫力ある競り合いを制する姿は数字を超越した魅力を放っている。「川崎サポーターが喜んでいるのをしっかりと見ました。最後、優勝して借りを返したい」。自身に強烈なインパクトを残した敗戦は財産だ。ライバル相手の大きな1敗を糧に、渡辺はまた一つ強くなる。

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2019年7月15日のニュース