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西野監督 進撃支えた徹底した情報管理 誰より知っていた情報戦の怖さと大切さ

[ 2018年7月5日 09:30 ]

検証 西野ジャパン功罪(2)

<日本・セネガル>前半終了間際、オフサイドをアピールする昌子(左から2人目)と長友(右から2人目)(撮影・小海途良幹)
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 物々しい雰囲気に包まれていた。6月12日、日本のW杯前最後の親善試合パラグアイ戦の開始約15分前。日本協会スタッフがメインスタンド中央付近で不審なカメラを発見した。即座にスーツ姿の運営担当5、6人が集結。「誰のカメラですか?」。緊迫した表情で周囲にいた報道陣、観客に聴取したが、持ち主は見つからない。キックオフ直前に突如、長身の白人男性が現れ、カメラを回し始めた。身分照会の結果、パラグアイの分析担当であることが判明。関係者は「(1次リーグ同組の)ポーランドのスパイと思い、ピリピリした」と振り返った。

 西野ジャパンの実質的な準備期間は1カ月弱。情報戦の勝利なくして16強は語れない。指揮官が4月の就任後に最初に要求したのが、分析担当の充実だった。前体制では1人プラスアルファだったが、4人に増員。担当制を敷き1次リーグ同組の3カ国に密着させ、02年日韓大会後の全W杯で分析担当を務める和田コーチが統括した。ライバルを丸裸にする一方、情報漏えいを警戒。練習場周辺に常に警備員を配置するなど“カーテン”を引いた。

 西野監督は93年アジア最終予選を戦ったオフト政権下で偵察隊を務めた。ほふく前進で包囲網をくぐり抜けて練習を盗み見し、“潜伏”がバレて警察官に拳銃を突きつけられたこともある。オフト氏から情報戦の重要性を学び“ドーハの悲劇”はスタンドで経験。協会幹部は「西野さんの数少ない要求が分析担当の増員」と明かす。

 開幕前の親善試合3試合で登録メンバー全23選手を起用。3バックと4バックを併用した裏には対戦国をかく乱する狙いもあった。コロンビア戦ではスロースターターの相手の弱点を狙い撃ち。序盤から攻勢に出て、開始早々のPK弾&相手の退場を引き出した。セネガル戦のオフサイドトラップも情報が漏れなかったから成し得た奇策だ。“もってる”采配は情報力と分析力に支えられていた。

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2018年7月5日のニュース