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宮本恒靖氏 長谷部へチームの“心を整えろ” 代表苦境打破へ主将の仕事に期待

[ 2018年5月8日 11:00 ]

【レジェンドからの言葉(5)宮本恒靖】

元サッカー日本代表の宮本氏
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 02年日韓大会、06年ドイツ大会と2度W杯に出場した宮本恒靖氏(41=G大阪U―23監督)は守備の要としてだけではなく、チームをまとめる主将だった。W杯開幕2カ月前に指揮官交代という未曽有の危機に立たされている日本サッカー界。困難を乗り越えるために必要なもの、現主将のMF長谷部誠(34)に期待するものとは――。

 忘れられない光景がある。2度目のW杯となった06年ドイツ大会の1次リーグ初戦オーストラリア戦。後半39分、スローインの流れから同点弾を許した。「ベンチの選手も含めて全員で喜びを爆発させて輪になっているのを目の当たりにして“チームの一体感は間違いなく大事だな”と」。主将マークを巻いていた宮本は、オーストラリア代表の結束に驚きを隠さなかった。

 初めてのW杯出場だった02年日韓大会。有名な風呂場会議がある。トルシエ監督の代名詞「フラット3」戦術は対戦相手に研究され尽くしていた。ドローに終わった初戦のベルギー戦後、湯船につかっていた松田直樹が「戦術に縛られすぎだ」と口火を切ると、宮本ら守備陣も同調。「もう少しラインの上げ下げを慎重にやれば良いという感覚は各自が持っていて合致した」

 2戦目ロシア戦前に最終ラインでコンビを組んでいた松田と中田浩二を中心に、全体の感覚を何度も確認し擦り合わせた。「守備はDFだけでやるわけじゃない。DFラインの上げ下げで駆け引きをするためにも前の選手がプレッシャーをかける。献身性も大事。その辺を徹底させる声と共通理解は重要になる」。代表メンバー23人が日本サッカー史上初のW杯白星というベクトルに向いていた。

 「各大会に臨むチームには個性や特徴がそれぞれある。どのチームも最初からまとまっているわけじゃない」

 現役時代は常にチームを俯瞰(ふかん)して見てきた。どうすれば良くなるのか、勝てるのか。宮本が強調したのは中国で行われた04年アジア杯。強烈な反日感情が渦巻く異様な雰囲気で「大会中からお互いが要求しあった。スタッフも選手も交えて話し合った」と一戦ごとに一体感を強めた。決勝の中国戦前にジーコ監督から言われた言葉は今も胸に刻まれている。「セレソン(代表)は国民を幸せにできる存在。皆の力で幸せにしよう」

 現在、日本サッカー界は未曽有の危機に立たされている。開幕2カ月前に監督交代。その苦境を打破するために期待するのは、やはり主将の長谷部誠だ。

 「凄く経験を持っていて、代表にも長くいる。何かをいうことはない。でも非常事態なのは全員が分かっている。今まで以上に全員が意識してコミュニケーションを取る必要がある。そして犠牲心を持って、チームで勝つという思いを一つにできるか。そのブレない雰囲気づくりをするのはキャプテンの仕事」。長谷部ならできるからこその言葉だった。

 ◆宮本 恒靖(みやもと・つねやす)1977年(昭52)2月7日生まれ、大阪府富田林市出身の41歳。95年6月にG大阪ユースからトップ昇格。G大阪―ザルツブルク(オーストリア)―神戸を経て11年に現役を引退した。国際Aマッチ通算71試合3得点。日本代表ではU―17からA代表までの全カテゴリーで主将を務めた。1メートル76、72キロ。

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