×

柳沢敦氏 “判決”受け、あえて言いたい 代表FWへ「W杯でゴールは大事」

[ 2018年4月10日 11:30 ]

【レジェンドからの言葉(1)】 柳沢敦

02年日韓、06年ドイツの2大会で得た経験について語る柳沢氏
Photo By スポニチ

 6月に開幕するW杯ロシア大会で日本代表が結果を残すためには、何が必要なのか。過去のW杯に出場した代表戦士が、同じポジションの後輩たちへ贈る「レジェンドからの言葉」。連載第1回は、FWとして2大会に出場した柳沢敦氏(40=鹿島コーチ)。ワンプレーで“審判が下された”ストライカーが語る、W杯で求めるべきものとは――。

 柳沢氏にしか伝えられない、柳沢氏だからこそ伝えられるFW陣への言葉だった。

 「W杯で、ゴールは大事」

 センターサークル付近から見上げた16年前の夕刻の空の色は、今も覚えている。最高潮に達した緊張は少し収まり「今ここに立てていることが幸せ」という感情がこみ上げた。気合がみなぎった瞬間に初戦のキックオフを迎えた02年日韓大会。初戦ベルギー戦と続くロシア戦で、稲本への2本のアシストを記録した。「(点を)決めたイナを褒めるべき」と言う2つのパスは紛れもなく日本を史上初の決勝トーナメントに導くプレーだった。

 「FWの仕事は、点を取ることだけじゃない」。ずっとそう思い続けていた。4年後のドイツ大会は、本番の3カ月前に第5中足骨を骨折しながら、24時間態勢のケアで乗り越えて再びピッチに立った。ところが勝利が義務づけられた2戦目のクロアチア戦で、絶好の決定機を外すミスを犯してしまう。

 動きだしのセンスは誰にもまねできない。味方のチャンスを献身的に生み出すプレーは同僚をも虜(とりこ)にするほど。ただ、W杯での一つのプレーだけが象徴的に切り取られ、世間から批判を浴びた。

 「ある意味“判決”が下ったような感覚になった」

 もちろん「自分は信じるFW像を貫き通して現役を終えた」と言い切るサッカー人生には誇りがある。それでも、逡巡(しゅんじゅん)を経て、思い至った。やはり「W杯で、ゴールは大事」と。

 日韓大会で16強入りした日本は、ドイツ大会では1次リーグ敗退。「(突破への)半分以上を占めていると言ってもいいくらい」左右したのは初戦の結果だった。「(日韓は)初戦の引き分けが勢いをもたらしてくれた。自分たちは歴史を変えるんだという強い団結力があった」。個人の準備では緊張感をほぐす精神コントロールも大切な要素だったという。

 「大きな舞台だけに、いい意味でも悪い意味でも与える影響は大きい。結果いかんによっては評価も大きく変わる」。それが柳沢氏の経験したW杯。今大会のFW陣にはあえてこんなエールを送る。「逆に、その舞台を思う存分楽しんでほしい。プレッシャーもあるでしょうけど、最高の舞台だということは間違いないので」

続きを表示

この記事のフォト

2018年4月10日のニュース