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W杯にビデオ判定「VAR」導入決定、映像確認の審判員採用も

[ 2018年3月18日 05:30 ]

1966年イングランド大会決勝、イングランド・ハーストのシュートがゴールに(AP〉
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 6月14日に開幕するW杯ロシア大会で“ビデオ判定”が導入されることが正式に決まった。16日、FIFAがコロンビアのボゴタで開いた理事会で「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」と称する映像確認の審判員を採用することを決議。全64試合で、試合結果に大きく影響する誤審を防ぐためピッチ上の主審を補佐する。

 今月3日に競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)で承認されていたVARが、W杯で採用されることが正式決定した。理事会後に会見したFIFAのインファンティノ会長は「歴史的な決断だ。より公平で透明なスポーツになる」と意義を訴えた。VARが携わるのは「得点」「PK」「一発退場」「(警告、退場などの)人定」に限られ、映像で確認した内容を主審に伝達。直接判定を下すことはなく、最終的な判定は主審のみに決める権限がある。

 FIFAは14年の前回W杯で初めてゴール判定の技術(ゴールライン・テクノロジー=GLT)導入に踏み切り、さらに映像の応用を拡大したVARの試験運用を昨年のコンフェデレーションズ杯などで実施。VARの導入で正しい判定率は98・8%まで上昇したということで、同会長は「VARが(ピッチ上の)審判団を確実に助けられるとの確証と具体例を得られた」と成果を強調した。

 一方、現場では判定に時間がかかり過ぎるなどの批判が根強い。昨年12月のクラブW杯でVARによりゴールを取り消される場面があったRマドリードのジダン監督は「何が起きたのか分かったのは4分後だった」と批判。VARを採用しているドイツ1部でプレーするケルンの日本代表FW大迫は「好きじゃない。流れがあってのサッカーだと思う」と違和感を口にする。

 IFABの公表資料によると、試合中にVARが「奪った」と定義づけした時間は1試合平均で55秒。インファンティノ会長は「10秒から20秒で正しい判定が得られる」と主張するが、運用面では観客、視聴者への分かりにくさを含めて課題が残る。

 ▽ビデオ・アシスタント・レフェリー (VAR) 試合中の微妙な局面を映像で確認し、主審に伝えて判定を手助けする「ビデオ副審」。W杯ロシア大会では国際審判員が任命され、3人の補佐役(AVAR)とチームを組んでモスクワの視聴覚室で作業する。スローモーション専用を含む30台以上のカメラからの映像を検証。主審は一発退場や、得点場面で攻撃側の反則が疑われる場合などは、自らもピッチ脇に設置されたモニターで映像を確認する。

 【W杯の主な疑惑判定】

 ★ウェンブリー・ゴール(66年イングランド大会) 聖地で行われたイングランド―西ドイツの決勝。2―2の延長前半11分、イングランドFWハーストのシュートはバーに当たって真下に落下した後、ゴール外に出た。協議の末、得点と認定。4―2でイングランドが初優勝。

 ★神の手(86年メキシコ大会) アルゼンチンのFWマラドーナが準々決勝イングランド戦で後半6分に先制ゴール。GKと競り合った際に振り上げた左手でボールをはじいた。試合後「俺の頭と神の手が決めた」と振り返った。

 ★幻の同点(10年南アフリカ大会) 決勝トーナメント1回戦ドイツ戦で、イングランドMFランパードが1点を追う前半38分にミドルシュート。ボールはクロスバーを叩き下に落ち、バックスピンがかかってゴールから出た。ビデオでは明らかにラインを割っていたが得点は認められず、結局ドイツが4―1勝利。GLTなど技術導入のきっかけとなった。

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