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女川“希望の1点”震災から7年、念願JFLデビュー

[ 2018年3月12日 05:30 ]

<ホンダ・女川>後半8分に1点を返し、喜ぶ女川イレブン
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 JFLが開幕し、初参入のコバルトーレ女川はアウェーで昨季王者のホンダFCに1―2で敗れた。11年の東日本大震災で甚大な被害を受けてからちょうど7年で迎えた初の全国舞台。力の差を見せつけられての黒星発進となったが、MF黒田涼太(27)が直接FKでJFL初ゴールを挙げるなど将来的なJリーグ参入に向けて希望をともす幕開けとなった。

 全国の分厚い壁に、はじき返された。だが、そのレベルの高さを知ったことこそが、コバルトーレ女川が歩を進めた何よりの証拠だった。昨季王者にスコア以上の力の差を見せつけられた。開幕戦を終えた村田達哉監督(45)は「とにかく走って、戦ってくれた。ひたむきな姿勢を町民が感じてくれれば、女川でサッカーができる存在意義につながる」と語った。

 圧倒的に試合を支配され、2点を先行された。それでも諦めない。後半8分、左サイド深くでFKを獲得。黒田が蹴ったボールに味方が詰め、その圧力もあってゴール右隅に吸い込まれた。「みんなで取った1点」。チームのJFL初得点を刻んだ黒田は胸を張る。技術、体格で劣ったが、誰一人諦めない。走力で上回り、最後まで追加点を狙った。

 そのユニホームには、東日本大震災の経験が染み込んでいる。宮城県女川町は高さ最大約15メートルの津波にのみ込まれ、選手寮、クラブハウスが全壊。奇跡的に全員の無事が確認され、その多くが働いていた水産加工会社「高政」も被害を免れた。震災後から商品のかまぼこを生産し避難所へ届け、給水車で水を運んで回った。創設時の06年から所属するFW吉田圭(30)は「先が見えなかった。でも、誰も逃げようとしなかった」と振り返る。

 支援活動に追われ、ボールを蹴る状況にはなかった。チームは活動休止となったが、住民の「サッカーをやってほしい」という願いを後押しに1年後に活動を再開。13年に東北社会人リーグ1部へ復帰し、今季ついに念願のJFLにたどり着いた。運命を変えた3・11から7年が経過。主将のMF成田星矢(31)は「このクラブが全国に知ってもらえた日。うれしく、誇りに思う日です」と言った。いつかJの舞台へ――。女川の夢は終わらない。

 ▽コバルトーレ女川 06年4月にスポーツを通じての町づくりを目指す「女川スポーツコミュニティー構想」に基づいて創設。同年から石巻市民リーグに参戦。11年に1年間活動休止。16、17年と東北社会人1部リーグを連覇。チーム名は女川の青い海(コバルトブルー)と自然豊かな森(フォーレ)を合わせたもの。全選手がアマチュア契約で、火〜土曜日の午後6時すぎから全体練習が行われる。

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