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引退セレモニー取材現場で覆された“怪物”平山氏への積年の疑問

[ 2018年3月6日 10:45 ]

引退セレモニーで仙台イレブンから胴上げを受ける平山氏
Photo By スポニチ

 まるで夏の甲子園のような取材現場だった。30人ほどの報道陣が、お立ち台に立つヒーローを見上げながら熱心に耳を傾ける。そのお目当ては、元日本代表FW平山相太氏(32)だった。3月3日、味の素スタジアムで行われたFC東京―仙台戦。今年1月に電撃引退した平山氏の試合後の引退セレモニーが終わり、囲み取材の場が設けられた。

 正直に言う。平山氏と同世代の自分にとって、怪物ストライカーを巡る狂騒曲には違和感しかなかった。この業界に入る前は「あんなに注目されて、かわいそう…」。そして、業界に入った後は「そんな無理やり、取り上げる必要ある?」。個人的な感想としては、そんな率直な思いを抱き続けてきた。

 だが、そんな積年の疑問は、平山氏の取材現場を目の当たりにして、一気に覆された。報道陣が殺到する平山氏のためにFC東京のスタッフは約50センチのお立ち台を用意。1メートル90の長身が2メートル40の高さになりながらも、冒頭から「最後の囲み取材ですね…。お手柔らかにお願いします」と下から目線で語る。16歳のFW久保建英と同じチャントが使われていることには「恐縮です…」と苦笑いし、自身の国立競技場での活躍について問われれば「東京五輪で新国立男が現れるでしょう」と勝手に?予言。等身大のまま取材に答える平山氏にとっても、それを聞く報道陣にとっても幸せな時間だったと思う。

 平山氏は仙台大に進学し、指導者を目指すという。味スタの記者室では「平山って携帯学割、使えるのかな?」と余計なことまで考える人もいた。かつて平山氏に夢を見た先輩記者たちが一挙手一投足にまで気を配って原稿にしていた時代。そんな思いを触発させてくれる不世出のストライカーであることが、わずか数十分で理解できた。(大和 弘明)

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