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王者・川崎Fを巡る2つの衝撃的な移籍 6クラブに在籍した元日本代表岩本輝雄氏が思うこと

[ 2018年1月13日 17:26 ]

横浜から川崎Fへ完全移籍した元日本代表MF斎藤学
Photo By スポニチ

 昨シーズン悲願のJ1初王者に輝いた川崎フロンターレ。このオフには、その川崎Fを巡って驚きの移籍が2つありました。1年前にFC東京へ完全移籍したばかりだったFW大久保嘉人(35)の復帰と、8歳から横浜のアカデミー(育成部門)で育ったMF斎藤学(27)の完全移籍での加入です。

 この2つの移籍を聞いた時、率直に「DAZNマネーはすごいな」と思いました。悲願の優勝で得た巨額の賞金を有力選手の獲得に費やす。これはクラブの姿勢としては当たり前です。川崎Fにはもともと日本屈指のスーパーな選手が多数在籍していますが、そこへ大久保、斎藤と日本代表クラスの選手が2人も入る。皆先発で試合に出て結果を残すタイプの選手なのでうまく使いこなせるのかという思いもありますが、色々な攻撃ができるのは間違いない。素直に楽しみです。

 両選手の移籍は背景もパターンも違います。ですが、共通しているのは「なぜ?」というファン・サポーターの皆さんの複雑な思いでしょう。大久保はわずか1年での出戻り。斎藤は20年近くを過ごし、主将と10番の重責を担った横浜から神奈川ダービーを戦う”お隣”のチームへの禁断とも言える移籍です。斎藤に関しては、横浜サポーターにとってはフィーゴがバルセロナからレアル・マドリードに移籍した時のバルササポーターと同じような衝撃であることは容易に想像できます。

 私個人としての勝手な思いでは、斎藤には横浜の所属選手のまま最後までプレーしてほしかった。MF中村俊輔(39=現磐田)がいなくなった後のマリノスの顔として、あのトリコロールのユニホームを着てプレーする姿を、あのドリブルを、今後も日産スタジアムで見たかった。ただ、サッカー人生は短い。最終的には本人の好きなようにやっていいと思うし、好きなようにやるしかないと思います。

 私は現役時代に平塚(現湘南)、京都、川崎F、V川崎(現東京V)、仙台、名古屋とJリーグ6クラブでプレーをしました。当時は若かったので単純に監督と合う、合わないとか、試合に出たいという思いで移籍を決めました。でも、現役を辞めて10年も経つと思うんです。1つのチームに愛着を持って最後までやるのはいいなあ、うらやましいなあって。川崎Fで言えばMF中村憲剛(37)みたいに。

 私は今でも本当にベルマーレが大好きです。だから決して自ら喜んで移籍したわけではないんです。でも、当時はクラブの経営的な問題もあって自分の気持ちだけではどうにもならないこともありました。斎藤も大好きなマリノスを出るのは相当な苦悩、葛藤があったと思います。手術した膝が治れば川崎Fでも活躍するのは間違いないし、今回の決断も尊重しますが、もし今回の決断に今後変化があるのであれば、大久保のように1年後に横浜へ戻ることも選択肢にあっていいのではないでしょうか。

 大久保は個人的にものすごくプレッシャーのかかる1年になります。昨シーズン彼がいない中でチームは初タイトルをつかみ、かつてコンビを組んだFW小林悠(30)は大久保不在の中で初の得点王に輝きました。大久保がJリーグ史上初の3年連続得点王を獲得した時とはチームの事情も状況も違います。リーグ連覇を目指す中、自らゴールを挙げ、小林らチームメートを生かすことも求められる。この状況で大久保がどんなプレーをし、どんな結果を残すのか。川崎Fサポーターならずとも、日本のサッカーファンが注目していることでしょう。(岩本輝雄=元日本代表MF)

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2018年1月13日のニュース