こんな代表戦でいいのか
【大西純一の真相・深層】日本代表の10月のキリンチャレンジ2試合は物足りない内容の試合だった。FIFAランクは日本が40位に対して6日に対戦したニュージーランドは113位。終了間際に倉田が決めて2―1でなんとか“格下”の相手を振り切った。11月に南米との大陸間プレーオフを控えて本気モードだったが、高さを経験するためにはいい相手だったものの、力でねじ伏せてほしかった。10日のハイチも48位でW杯本大会出場を逃した国。2―0から逆転されて、終了間際に香川のゴールで追いつきなんとか3―3で引き分けた。試合後、ハリルホジッチ監督がロッカーで「代表をなめるな」と選手に言ったそうだが、そう言われても仕方がない内容だった。
ただ、選手だけでなく、試合の位置づけもどうだったのか。本田、岡崎、長谷部のベテランは呼ばず、新戦力の発掘をテーマにした。ここまではいいが、ハイチ戦は9人入れ替えて“ターンオーバー”した。私はたとえ親善試合でも、国際Aマッチならばすべて真剣勝負、常に100%で戦うべきだと思っている。今回招集した選手のベストメンバーでスタメンを組み、入れ替えても2〜3人。9人も入れ替えて試すなら練習試合でやるべきだ。
キリンチャレンジは高い入場料を取っている興行でもある。しかも年間10試合もない貴重な国際Aマッチ。ファンも全力で戦い、勝つ日本代表を見たくて応援に来ている。代表のユニホームを着ていたら誰でもいいというのではない。スタジアムに行ったら「きょうは控え組のメンバーです」で、満足してくれるだろうか。常に競争に勝ち抜いた選手がピッチに立つから日本代表の重みがある。代表戦は常に日頃の成果を見せる“発表のステージ”であるはずだ。
サッカーの文化として、ターンオーバーは必要だと思う。しかしそれはクラブチームのことで、代表は違う。もちろん新しい選手を見たい人もいるし、実戦でテストすることも大事だろう。
スタジアムに足を運んだ観客をガッカリさせてはファンが減る。選手も代表のユニホームを着てピッチに立つために、常に全力を注ぐ仕組みを作らないとうまくならないし、日本が常勝国の仲間入りをすることもない。試されて日本代表のユニホームを着て、キャリアに国際Aマッチ1が加わるだけではいかがなものか。こんな試合をしていては日本のサッカーに未来は感じられなくなる。選手も監督も代表戦をもっと大事にしてほしい。
◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。
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