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麻也、リーグ杯で示した4年半の成長 ピッチ外でも中心的存在に

[ 2017年2月28日 10:10 ]

イングランドリーグ杯決勝   サウサンプトン2―3マンチェスターU ( 2017年2月26日    ロンドン )

<マンチェスターU・サウサンプトン>シュートをするラシュフォード(右)と、止めようとする吉田
Photo By AP

 イングランドリーグ杯の決勝が26日、ロンドンのウェンブリー競技場で行われ、日本代表DF吉田麻也(28)のサウサンプトンは、マンチェスター・ユナイテッドに2―3で敗れた。吉田はプロ初タイトルにあと一歩届かなかったが、今大会フルタイム出場で準優勝に大きく貢献。サウサンプトンの地元紙「サザン・デーリー・エコー」のアダム・リーチ記者が、12年の加入時から取材してきた吉田の成長ぶりを特別寄稿した。

 マヤのデビュー戦のことは忘れもしない。12年9月15日のことだ。サウサンプトン加入直後のアーセナル戦で初のベンチ入りを果たすと、先発したセンターバック(CB)が前半28分という早い時間帯で負傷し、マヤに急きょ出番が回ってきた。しかし、ここから守備が崩壊――。当時プレミアリーグに復帰したばかりのチームは失点を重ね1―6の大差で敗れた。イングランドの洗礼を受けたマヤが沈痛な面持ちで引き揚げる姿は今でも鮮明に覚えている。

 その後も苦戦は続いた。大きな壁となったのは先発争い。この4年半でCBのレギュラーに収まったのは、ポルトガル代表フォンテ(現ウェストハム)、クロアチア代表ロブレン(現リバプール)、ベルギー代表アルデルウェイレルト(現トットナム)、オランダ代表ファンダイクといった世界的名手ばかり。マヤはベンチ要員として彼らの後塵(こうじん)を拝し、出番はレギュラー組のケガや出場停止時に限られた。

 しかし、決して腐ることなくトレーニングを続け、限られた中で試合経験を重ねて、CBとして磨きをかけた。課題の状況判断力は改善し、スピードも力強さも安定感も増した。デビューから4年半の時間をかけ、一回りも二回りも成長したのである。その成果が、ファイナルまで勝ち進んだ今季のリーグ杯だ。準決勝まで無失点で勝ち進んだ今大会で、吉田は全試合にフル出場。決勝でも23歳の若手DFスティーブンスを助けながら、守備のリーダーとして最終ラインを統率した。

 試合は2―3で敗れたがマヤ自身にミスはなく、むしろ堅実なディフェンスでチームを支え続けた。2ゴールを奪ったイブラヒモビッチに対してもマヤのカバーエリアではタイトなマークで仕事をさせなかった。その勇ましい姿に、強豪アーセナル相手にまるで歯が立たなかったデビュー時の面影はなかった。

 今やピッチを離れてもチームの中心的存在だ。英語を流ちょうに操り、気の利いたジョークで英国系選手たちを笑わせている。そのうえ人望も厚い。頼りになる存在だからこそ、FA杯3回戦(再試合=1月18日)のノーリッジ戦で主将を任された。今季から指揮を執るピュエル監督の評価も高く、今後も主力としてサウサンプトンを引っ張ってくれることだろう。

 ◆アダム・リーチ サウサンプトンの地元紙「サザン・デーリー・エコー」のスポーツ部門主筆。サウサンプトン担当歴は15年。09〜11年の3部時代も密着取材を行っており、選手、OBとも親交が深い。

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2017年2月28日のニュース