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Jリーグはどこへ向かうのか

[ 2016年10月21日 11:20 ]

 【大西純一の真相・深層】Jリーグは10月12日の理事会で、来季からJ1を1ステージ制に戻すことを承認、2ステージ制はわずか2年で終了することになった。2年前、「なぜ定着している1ステージ制を変更する必要があるのか」「サッカーは年間を通して戦って1位になるからこそ価値がある」と、いう意見を抑えて改革に踏み切ったばかり。Jリーグの将来を見据え、「消化試合が少なくなる」「世界の多くの国が、ポストシーズン大会を実施している」と、反対派を説得して導入した。チャンピオンシップの実施で約10億円の増収を見込み、Jリーグ活性化の最後の切り札として、「最低でも5年は続ける」と、固い決意で臨んだはずだった。

 わたしはリーグ戦は1年間を通して戦うべきだと考えているが、2ステージ制にも短期決戦ならではの面白さがある。今年の第1ステージでも、川崎Fが首位を走りながら、「あと2試合」で鹿島が逆転優勝するドラマがあった。ただ、こういう改革は何年も続けなければ定着しない。改革にはスピードも必要な時があるし、軌道修正は早いほうがいい。熟成とスピード改革のどちらが良かったかは歴史が判断することだろう。

 今回、2年で再び舵を切った背景には、英国の国際スポーツメディアのパフォーム社との大型放送権契約を結んだことが大きい。賞金や各クラブへの分配金が増額され、リーグ主導で思い切った改革ができる環境が整った。各クラブの経営も安定し、チーム強化に資金を投じることができる。質の高い試合が見られ、観客動員やテレビやインターネット放送の視聴者も増え、露出度も上がる。村井チェアマンも理事会後の会見で「パフォーム社に10年間で2100億円もの投資をしていただいた。期待値に対して成長や魅力を増す必要がある。Jリーグのレベルが上がれば魅力も増し、多くのファンに注目してもらえれば」と話していた。

 プロの興行だからスポンサーが重要なのは当然だが、忘れてはいけないのはスポンサーとの“距離感”だろう。Jリーグは開幕時、チームに企業名を外すことを求め、地域と密着した新しい形をつくり出した。企業名を外したことで地域の人が応援しやすくなったが、企業がメセナに力を入れていた時代だから、できたことかもしれない。一方で、第1ステージを「サントリーシリーズ」第2ステージを「ニコスシリーズ」、カップ戦を「ナビスコカップ」(今年の決勝トーナメントからルヴァンカップ)と名付け、リーグのスポンサーは前面に出した。一度はリーグの冠はなくなったが、リーグ戦は昨年から「明治安田生命J1リーグ」と、冠が付いた。

 パフォーム社は企業名を出すわけではないが、企業である以上は投資に対する見返りを求めるのは当然だろう。といって、スポンサーに気を使いすぎてしまったのでは、向かう方向が違ってしまう。距離感は難しい。来年、Jリーグ25周年の節目の年に、大きな分岐点を迎える。(専門委員)

 ◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。

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2016年10月21日のニュース