逆転残留を「つかみ取ろう」 湘南指揮官のポジティブシンキング
リオ五輪では、ハラハラドキドキの逆転劇が次々と起こっている。体操個人総合の内村航平は、最終種目の鉄棒で絶望的とも言える1位との0・901点差をひっくり返して頂点に立った。テニスの錦織圭は、準々決勝第3セットのタイブレークで3度のマッチポイントをしのいで大逆転。銅メダルへの道をつないだ。
これらを“栄冠への大逆転”とでも言うならば、地球の裏側には崖っ縁に追い込まれた状況から“生き残りへの大逆転”を目指すサッカーチームがある。3季ぶりのJ2降格危機にある、湘南ベルマーレだ。
第1ステージを16位で折り返し、現在は第2ステージ、年間順位とも降格圏の17位につける。前節の広島戦では今季初の6連敗を喫した。降格を免れる年間15位との勝ち点差は「4」しか離れていない。とはいえ、いよいよ黄色信号はともり始めたように見える。普通の指揮官ならきっと逃げ出したくなるような苦境の中、試合後のチョウ・キジェ監督(47)は言った。
「残り9試合、奇跡の残留を果たしたい」
ぱっと聞くと、絶望的な状況からわらにもすがる思いではい上がるような、つらく険しいイメージだ。でも、指揮官の意図は違った。「今まで誰も起こしたことがないから、“奇跡の残留”という言葉を使った。残留という言葉はどこかネガティブなように聞こえるかもしれないけど、僕の中では凄くポジティブ」
チョウ・キジェ監督によると、Jリーグでは残り10節の段階で勝ち点が20以下のチームが残留した例はないという。海外に目を向ければ、昨季のブンデスリーガでは、残り10節で勝ち点21だったホッフェンハイムが最終的に37まで勝ち点を積み上げて残留した例もある。だが、現在の湘南は残り9節で勝ち点19。さらに追い込まれている。
だから、指揮官はイレブンにあえて言ったという。「ブンデスリーガや日本でもできなかったことに、トライしよう」。まるで頂点を目指す者に掛ける言葉のように。「奇跡は偶然じゃなく必然で起こるもの。その必然を自分たちの姿勢でつかみ取ろう」。「残留」が能動的につかみ取れるメダルであるかのように。
4年に1度の夢舞台が終わった数カ月後には、Jリーグが終盤の佳境に差し掛かっていく。タイトル争いだけじゃない。生き残りを懸けた戦いにも、きっとドラマがある。 (波多野 詩菜)
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