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OA枠塩谷 父命日に誓う金、育ててくれた母にも感謝

[ 2016年7月23日 05:30 ]

大量の荷物とともにゲートから出てくる塩谷

 サッカーのリオデジャネイロ五輪代表が22日、英国経由の航空機でブラジル・サンパウロに到着した。オーバーエージ枠に選出されたDF塩谷司(27=広島)にとっては、この日が7年前に亡くなった父・晋也さん(享年45)の命日。サッカーの道を歩ませてくれた両親にメダルを届けるためにも、大舞台での活躍を誓った。FW浅野拓磨(21=アーセナル)と南野拓実(21=ザルツブルク)が英国で合流し、本隊とともに現地入りした。

 戦いの舞台に塩谷が降り立った。日本を離れてから約31時間の長旅を終え、早朝の午前5時38分にサンパウロに到着。160個以上の荷物を回収するのに3時間近くかかり疲労感をにじませながら、時に笑顔で興梠らと談笑した。オーバーエージとして五輪代表に選出されてから「(目標は)チームとしては金メダル。個人としては勝利に貢献したい」と話してきた27歳は、覚悟を胸にブラジルに来た。

 亡き父親への思いがある。ちょうど7年前、国士舘大3年時の09年7月22日。支え続けてくれていた晋也さんがくも膜下出血で倒れ、45歳の若さで急逝した。「朝、起きたときには意識がなかった」と母・宏美さん(51)が振り返るように、あまりに突然の死だった。

 徳島の実家に戻った3兄弟の長男は、国立大に通う次男の学費を稼ごうと、一度は大学を中退してサッカーをやめることを決心した。「大学入学前に自分の部屋に貼った“プロになって帰ってくる”と書いた紙をゴミ箱に捨ててたんです。それを見たとき“絶対にやめさせたくない”という思いがありました」(宏美さん)。サッカーを始めてから「子供がやりたいことはやらせる」というのが晋也さんと宏美さんの方針。直接は伝えなかったが、両親の思いが最後に息子へと届いた。

 プロになり、塩谷は親孝行の一つとして晋也さんのお墓を実家近くに建てた。介護業に加え、夜にはパチンコ店の清掃をして生計を立てた宏美さんは「本当にうれしかった」と笑顔を浮かべる。だが、両親への感謝は今も尽きない。

 「母には“こんな頑丈な体に産んでくれてありがとう”と言いたい。父も天国から見守ってくれていると思う。頑張っている姿を見てもらいたい」。アラカジュでの合宿を経て、30日にはブラジルとの親善試合に挑む。世界に立ち向かい、メダルを持ち帰る。

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2016年7月23日のニュース