村井チェアマン 日建設計がカンプノウ改修―その経験を日本にも

[ 2016年7月12日 13:00 ]

 リーガ・エスパニョーラの強豪・バルセロナのホームスタジアムであるカンプノウは欧州を代表するスタジアムである。このたび、スタジアムの老朽化や施設の不具合を解消するためスタジアムの大規模な改修を実施することになり、設計業者選定のコンペティションが行われたが、厳しい選考の結果、地元建築事務所と組んだ日本企業・日建設計が見事勝者となった。

 先日、このコンペに携わった同社の担当者から話を聞く機会を得た。改修は、カンプノウを試合会場として継続しながら段階的に進められることにまず驚かされた。スタジアムを使用しながらの改修を可能にするために、まずはエレベーター、エスカレーター、階段のユニットを12カ所に配置するのだが、効率的な動線を確認するために第三者機関による流動解析を活用するほどの緻密な作業だったという。

 コンペを勝ち抜いた要因としていくつかのキーワードが挙げられたが、私が最も注目したのはデモクラティック(民主的)というワードだった。バルセロナがあるカタルーニャ地方では民主的であることが重視される思想の一つであり、その思想はスタジアム改修にも反映されている。スタジアムのどの位置からでも同じ環境でゲームが見られるよう、屋根を全面に配したことなどは、その民主的な思想を象徴的に表している。

 デザインコンペでは、期間中3回のワークショップ(進捗=しんちょく=確認、認識のすり合わせ作業等)が行われた。それは設計の良しあしだけではなく、ともに仕事をしていくパートナーであるかも見定められていたことがうかがえる。日建設計は彼らの思いや意図をくみ取り、細やかな対応をすることで今回の快挙を成し遂げたが、日本人の強みである協調性や柔軟性が大いに生かされたのだと思う。

 これまで、スタジアムといえば海外の事例が多く語られ、あたかも日本のスタジアム建設は後塵(こうじん)を拝しているかの印象で捉えられていたが、今回の事実により、既に日本の技術力が海外に引けをとらない水準に達していることが証明された。

 こうして日本人の手により欧州トップクラスのスタジアムを大規模改修するまでの技術力を有したことを、日本の今後のスタジアム建設に生かしていきたい。我が国の気候・文化・風土に合ったスタジアムを数多く造ることでさらなるスポーツ文化の醸成を促したい。 (Jリーグチェアマン)

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