関塚前監督の実感 五輪メダルの鍵はOA枠と守備の重要性
リオデジャネイロ五輪を控える手倉森ジャパンに対し、12年ロンドン五輪で監督として日本を44年ぶりの4強に導いた関塚隆氏(55=現J2千葉監督)が上位進出のヒントを語った。当時を振り返り、ポイントに挙げたのは24歳以上が対象のオーバーエージ(OA)枠の選出、タフな選手の起用、そして白星スタートの重要性。48年ぶりのメダル獲得を狙う“後輩”にエールを送った。
リオ五輪に臨むU―23日本代表はトゥーロン国際大会で1勝3敗の1次リーグ敗退。課題を露呈した。とはいえ、五輪出場を決めたU―23アジア選手権で優勝。今月11日の親善試合ガーナA代表戦も3―0で制するなど地力を蓄え、メダル獲得への期待は今なお高い。
「手倉森監督も言うように、今年の大会はメダル獲得の機運が非常に高い。だったら僕はOA枠を使うべきだと思う。ただ、どういうポジションに誰をあてがうのかは彼の考えで、僕が言うことではない」
ロンドン五輪時にOA枠を絞り込むポイントとなったのは、“世界”を実感したトゥーロン国際大会だった。
「アジアの予選がそのまま世界の大会に通じない。トルコ、オランダと戦い、欧州予選で負けたチームでもレベルが高いと思い知らされた。“このDFラインでは世界ではちょっと厳しい”と実感した」
今季のJ2開幕前に行ったキャンプ地では手倉森監督と対面。一つの助言をしていた。
「“アジアから世界まで、大会を通してどういうものさしでチームを図っていくのかが非常に難しい”と。そこをどう手倉森監督は今回の大会(トゥーロン)で持っていくか、というところ(が大切)」
ロンドン五輪時、OA枠の人選を絞り込む上では、まず第一にDFの戦力補強、そしてチームの輪も重視した。DFの吉田と徳永を選出したが、主将の吉田は88年生まれ。既存の最年長と1歳しか変わらなかった。
「チームとの融合が第一。日本人の場合はどうしても年齢で上下関係があるので、どういう風に払しょくするのか。(OA枠の選手に)リーダーとなってもらいたいけど、一人ひとりが迷わずプレーできるチームを構築することが大事」
いざ本大会。44年ぶりに4強入りした前回は、16日間で6戦という日本が五輪で初めて経験する過密日程だった。
「大会に入ったら、心の調整と体のコンディショニングにほぼ占められてしまう。ロンドンの場合は移動も非常に過酷だった。そこで結果を残せたことで、いろんなノウハウが見えた大会だったのでは」
18人の少人数で戦い抜くためにはタフな選手が欠かせない。ロンドンではスペインとの1次リーグ初戦でDF酒井宏が左足首捻挫。準々決勝エジプト戦まで回復を待つなどやりくりに苦心した。
「エジプト戦では、永井が打撲して太腿がしっかりと曲がらない状態になった。そう代えは効かない。打撲や少しのケガがあってもタフに戦っていける選手が大事」
そんな中、リオに臨むU―23代表は、18日間で6戦を戦ったアジア最終予選で優勝。今年からホーム&アウェー方式が1カ所集中のセントラル方式に切り替わり、より本番に近い環境だった。
「セントラル方式の中で、手倉森監督はうまく選手をターンオーバーして優勝に導いた。本大会に向けて、非常に効果的な起用を視野に入れながらできた大会だったんじゃないか」
鍵を握るのは初戦。ロンドン五輪では当初、1次リーグ突破を目標に掲げていた。初戦のスペイン戦での金星が、流れを変えた。
「とにかく初戦のスペイン戦に全てを懸けていた。引いてもどうせボールを奪えないなら、前線から引かずに行こうと。勝った瞬間に、“さあ、これで次、この大会をどうやって持って行くか”と夢は膨んだ。“次行こう”っていう気運が(チーム全体に)膨らんだのが凄く印象的」
今大会もメダル獲得への鍵は、初戦のナイジェリア戦だと考える。
「強豪国でもあるし、初戦でもある。しっかりとした日本の戦い方で結果を残すことが一番のポイント。手倉森監督はそういうところで結構勘が働く、“持っている”監督じゃないかなと思う。私自身もリオ五輪は期待している。期待できると思う」
手倉森ジャパンにはロンドンの4位を上回るメダル獲得を願っている。
◆関塚 隆(せきづか・たかし)1960年(昭35)10月26日、千葉県船橋市生まれの55歳。早大卒業後、84年に本田技研に入社。91年に現役を引退し、母校早大ア式蹴球部で指導を始める。鹿島、清水コーチ、鹿島ヘッドコーチを経て、04年に川崎F監督に就任。10年にU―23日本代表監督に就任し、12年ロンドン五輪を指揮。磐田監督を経て、14年7月からJ2千葉監督。1メートル75、72キロ。
▽関塚ジャパンのロンドン五輪 1次リーグ初戦では優勝候補のスペインを1―0で破る金星を挙げた。2勝1分けの勝ち点7でD組を1位通過した。準々決勝ではエジプトを3―0で下して44年ぶりの4強。準決勝ではメキシコに1―3、3位決定戦は韓国に0―2で敗れ、68年メキシコ五輪以来の銅メダル獲得は逃した。
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