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【地元記者が語る岡崎】闘争心で“ラニエリ劇団”の一員に

[ 2016年5月5日 12:10 ]

練習で笑顔を見せる岡崎(右)

地元記者が語る岡崎・下

 サッカーの母国イングランドの地元紙記者が、レスターのFW岡崎について寄稿した第2回。全国紙デーリー・テレグラフでチーフを務めるサム・ウォレス記者が、プレミアリーグにおける日本人選手という視点から岡崎を評価した。

 これまでプレミアリーグには幾多の日本人選手が在籍してきた。香川真司(マンチェスターU)、中田英寿(ボルトン)、稲本潤一(アーセナル、フルハム、ウェストブロミッジ)、西沢明訓(ボルトン)、そして宮市亮(アーセナル)――。香川については、彼を連れてきたファーガソン監督がわずか1年で引退してしまったことが残念だが、総じて言えばイングランドで成功を収めたと言える日本人アタッカーは誰もいなかった。しかし、レスターの岡崎慎司が、これまでの歴史を変えた。レギュラーとしてフル稼働し、質の高いプレーとハードワーク、抜群の運動量でチームを支え続け、「奇跡のリーグ優勝」を遂げたチームで多大な貢献を果たしたのだ。プレミアの頂点に立った今、イングランドに挑戦した日本人選手で、岡崎の右に出る者は誰もいないだろう。

 興味深いのは、シーズン開幕前の時点で、岡崎を知る者が英国でさほどいなかったことである。昨季はブンデスリーガのマインツで2桁得点(12ゴール)を挙げているが、こうした実績を知る者は一部のサッカーファンのみ。香川や中田に比べると知名度は断然低かった。ところが、レスターの躍進とともに岡崎の名は広く知れ渡るようになった。攻守にガツガツ向かうプレースタイルに、「闘争心」や「勝ちたい気持ち」を評価する英国のサッカーファンは心を奪われ、惜しみないハードワークと豊富な運動量にも賛辞の拍手を送ったのだ。そして第30節(3月14日)のニューカッスル戦で決めた豪快なオーバーヘッドキック――。決勝弾にもなったゴール(試合は1―0で勝利)は、イングランドで特大のインパクトを残した。

 今季のレスターの選手たちは、まるでクエンティン・タランティーノ監督の映画に出てくる登場人物のように、それぞれのキャラが際立っている。イングランド8部でプレーしたFWバーディーはスピードスターとしてゴールを量産し、フランス2部からやって来たMFマフレズも自慢の突破力を生かして攻撃にアクセントをつけた。そして、岡崎は驚異的なハードワーカーとしてレスターに活力を注ぎ込んだ。サッカーIQの高い選手であることもすぐに理解できた。奇跡を起こしたレスターに欠くことのできない選手として「Shinji Okazaki」の名は長く語り継がれていくことだろう。 =終わり=

 ◆サム・ウォレス ロンドン在住。11年にわたり英紙インディペンデントでサッカー部門の主筆を務めた後、昨年10月に高級紙デーリー・テレグラフと日曜版サンデー・テレグラフのチーフ・フットボールライターに就任。プレミアリーグや欧州CL、イングランド代表を中心に取材。テレビのサッカー番組への出演も多く、イングランドを代表する記者の一人。

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2016年5月5日のニュース