レスター 奇跡呼び込んだ“デジタル・ブラジャー”GPSで選手データを分析

[ 2016年5月4日 09:00 ]

レスターの選手が練習時に着用しているカタパルト社のトラッキングシステム「OptimEye S5」

 日本代表FW岡崎慎司の所属するレスターが、夢のプレミアリーグ初優勝を果たした。イングランド史上最大の番狂わせとも呼ばれる快進撃を支えたのはフィールドの全選手が献身的に走り回るカウンターサッカー。そのスタイルは一朝一夕には生まれない。練習法にある秘けつがあった。

 インターネットやテレビなどで、岡崎が練習時にブラジャーのような器具を着用していた写真や映像に見覚えがないだろうか?何を隠そう、これがレスターが奇跡を起こした“秘密兵器”。オーストラリアのスポーツ器具メーカー・CATAPULT(カタパルト)社が開発したトラッキングシステム「OptimEye S5」だ。練習中に着用することで「GNSS」と呼ばれる高精度のGPSシステムを駆使しながら走行距離や心拍数、体への負荷などを継続的に蓄積。選手のケガの回避やコンディションの維持につなげている。選手のパフォーマンス向上を目指したレスターが11年から同社のシステムを導入し、13年に現行モデルにアップグレード。古いモデルはアカデミーに流用している。

 Jリーグは昨季から「トラッキングデータ」を採用し、各試合の走行距離やスプリント数などを算出できるようにした。だが、これは試合会場にカメラを設置し、定点観測に基づいたデータであり、同器具とは似て非なるモノだという。携帯電話iPhoneのGPSシステムは1秒に1度、衛星と交信するが、「GNSS」システムではその10倍の10度も交信。コンマ1秒ごとの位置情報を基に、選手の正確な走行データをはじき出す。抽出したデータは、各競技に合わせた独自のアルゴリズム(法則性)に合わせ、必要なデータを算出。その分析結果は米国の複数の大学で研究され、実証済みとのことだ。

 同器具はレスターのみならずドルトムントやACミラン、マインツなどの日本代表選手が所属する欧州のクラブが既に導入。スウェーデン代表も契約し、FWイブラヒモビッチ(パリSG)が同器具を着用する写真が話題になったという。急成長を遂げる中国リーグも既に7チームが取り入れるなど世界のサッカー界に広がりを見せ、NFL、NBA、NHLといったアメリカンスポーツの約半数のプロチームが使用。日本でもJ1柏、J2札幌が今季から導入している。同社で日本、韓国を担当する斎藤兼ビジネス開発マネジャー(30)は「今後、日本のスポーツにおいてもアスリートトラッキングの重要性を理解していただき、選手のケガを減らせたり、コンディションを上げることでゲームのパフォーマンスが上がれば」と言う。レスターは根性論だけで走っていただけでない。サッカーがデータ分析、運用の時代に入ってきたことを裏付けた革新的な優勝だった。(記者コラム・大和 弘明)

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