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逆転Vなるか?トットナム 20歳の若き司令塔は苦労人

[ 2016年4月12日 13:17 ]

<トットナム・マンチェスターU>後半、ゴールを決めるアリ(AP)

プレミアリーグ第33節 トットナム3―0マンチェスターU

(4月10日)
 プレミアリーグの優勝争いは、日本代表FW岡崎慎司(29)が所属するレスターとトットナムにほぼ絞られた。2位トットナムは10日、ホームでマンチェスターUに3―0と快勝し、首位と勝ち点7差をキープした。先制点を決めた若きイングランド代表MFデレ・アリ(20)は、プレミアリーグ1季目でチーム2位の8得点を挙げる大活躍。リーグ最多22得点の同代表FWハリー・ケイン(22)とともに、55季ぶりのリーグ制覇を狙う古豪躍進の原動力となっている。

 逆転優勝へ望みをつなぐゴールラッシュは、トットナムの若き司令塔の一撃から生まれた。翌11日に控えていた20歳の誕生日を自ら前祝いするように、MFアリが後半25分に先制点。試合前の時点で首位レスターが勝利を挙げ、負ければ勝ち点10差で事実上の終戦となる状況だった。そんな重圧を吹き飛ばすゴールで勢いに乗ったチームは4分後に2点目、さらに2分後に3点目と、7分間で一気に3点を奪った。

 「なんて勝利だ!」

 ツイッターでマンチェスターU撃破の喜びをつぶやき、テレビカメラのレンズにキスをする自身の写真を投稿した。約2カ月ぶりの今季8点目。得点シーンに才能の片りんが表れていた。速攻で約40メートルを駆け上がり、その勢いのまま右足ダイレクトで左クロスを押し込んだ。好機を見逃さない戦術眼、1メートル88の長身を感じさせないスプリント、ゴール前の落ち着きと決定力。リーグ31試合で9アシストもマークしており、プレミアリーグ1季目の新人をポチェッティーノ監督は「トップ下でも守備的MFでもプレーできる」と絶賛する。

 16歳で3部ミルトンキーンズでプロデビューを果たした早熟。これだけ活躍しても「学ぶことがたくさんある。もっと成長しなくては」と語る謙虚さの裏には幼少期の苦労がある。英紙サンによると、ナイジェリア人の父と英国人の母はわずか1週間で離婚。アルコール依存症に苦しんだ母は「プロになる息子の夢をかなえるため」と苦渋の決断で、13歳のアリを同じサッカーチームに所属する友達の家庭へ養子に出した。プロ入り後、アリは実母や3人のきょうだいに仕送りやプレゼントを続けているという。

 イングランドの希望でもある。「子供の頃のアイドル」と憧れていたMFジェラード(米MLSロサンゼルス)の後継者と期待される。昨年10月にA代表デビュー。6月10日開幕の欧州選手権へ「ぜひ出たい」と意気込む。その前に狙うは、トットナムに1961年以来のリーグ優勝をもたらすこと。「簡単ではないが、我慢すればチャンスは来るはず」と逆転を信じて残り5試合に挑む。
 
 ◆デレ・アリ 1996年4月11日、英国ミルトンキーンズ生まれの20歳。ファーストネームの本名はバミデレ。11歳でミルトンキーンズの下部組織に加入し、12年11月に16歳で当時3部のトップチームでデビュー。15年1月にトットナムに完全移籍。古巣への半年間の期限付き移籍を経て今季からトットナムでプレー。U―17から各年代のイングランド代表に選ばれ、昨年10月の欧州選手権予選エストニア戦でA代表初出場。通算6試合1得点。1メートル88、73キロ。利き足は右。

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