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浦和 広州恒大戦勝利の裏に“禁じ手”告知活動と当日券値下げの英断

[ 2016年4月10日 09:20 ]

<浦和・広州恒大>盛り上がる浦和サポーター

 総力戦で臨んだ浦和がACL1次リーグの大一番を乗り切った。5日のホーム広州恒大(中国)戦。ゴール裏の応援席は赤色で埋め尽くされ、ピッチ上の選手も奮闘。相手の強力外国人を封じ、最後は武藤が決勝ゴールを決めた。「お金では買えない団結力がある」と槙野は言った1―0の勝利には、淵田敬三社長の、ある決断があったことも記しておきたい。

 その4日前。1日のリーグ甲府戦の試合前に、各社の浦和担当が記者室外の廊下に集められた。そこで淵田社長は「チケットを“爆買い”されました…」と切り出し「皆さんのお力を貸して下さい」と協力を求めてきた。大挙して来場するであろう相手サポーターに会場を“ジャック”されないため、浦和サポーターをもっと呼ぶために何をすればいいのか。そのアイデアを募集し、「当日券の値下げ」という案が挙がった。「すぐに検討します」と話した社長は、試合後に「採用します」とアナウンス。はっきり言って、大々的にメディアの力を借りるなんて聞いたことがない。だが、その“禁じ手”の告知活動があったからこそ、2万人割れが続いたACLで埼玉スタジアムが3万282人を記録。その力が選手の背中を押した。

 淵田社長が現職に就いたのは14年2月だった。同年のホーム開幕戦で一部サポーターが差別的横断幕を掲げ、Jリーグ側から無観客試合処分を下される大騒動を経験。当時の一連の動きや記者会見で新米ぶりを露呈してしまった。就任直後に「ド素人なのでいろいろ学んでいきたい」と話していた淵田社長は当時は反省ばかりが頭に残っていたのか挑戦への意欲が薄れたようにやつれ切っていた。だが、その印象が最近になって変わってきた。「いろいろやっていきたい」と話す淵田社長の表情は吹っ切れた様子だ。

 かつては満員札止めが当たり前だった浦和も、集客に苦心している。今後の企画について「本質からブレない中でやっていきたい」と畑中広報・ホームタウン担当本部長は言う。当然ながらクラブの心意気、本気度を感じなければ、サポーターの琴線に触れなることはない。広州恒大戦と同じアイデアは、もう採用しないはず。淵田社長と浦和側が用意する新たな一手に期待したい。(大和 弘明)

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2016年4月10日のニュース