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なでしこ、かみ合わなかった現場と協会の思い 今後の協会かじ取り試される

[ 2016年3月14日 10:45 ]

自国開催だった五輪アジア最終予選中国戦に敗戦後、佐々木監督はファンの前で謝罪した

 【なでしこ落日(5)】「佐々木則夫」。銀メダルを獲得した12年ロンドン五輪後、次期監督候補者リストを求められた女子の強化担当者が提出した書類には、その名前しかなかった。見通しの甘さや、人脈の乏しさを露呈する消極的な姿勢に協会幹部は激怒。11年W杯ドイツ大会で世界の頂点に立ち、ロンドン五輪後に勇退するはずの指揮官が続投となり、現場と協会の溝は深まった。なでしこが、「古いチーム」(大仁会長)に変わり果てた発端は、そこにあった。

 その距離感が今予選の悲劇となって表れた。10日間で5試合を消化する短期決戦。協会側は自国開催での誘致に名乗り出たが、これに現場は困惑した。「応援してくれる分、逆に勝たなきゃいけないとかいう妙なプレッシャーが絶対に出てくる」と佐々木監督。選手たちも「五輪に行って当たり前と思われている」と一様に話していた。協会は五輪出場へ地の利を生かそうとした“アシスト”だったが、大阪開催は現場サイドにとって重圧でしかなかった。

 迎えた初戦のオーストラリア戦。フタを開けてみれば、キンチョウスタジアムの応援席はガラガラだった。初戦を視察した、ある指導者は「監督も選手も“満員のスタジアムでやる”と意気込むのが普通だけど、イメージと違ったのでは?」と言い「(協会と現場の)両方の思いがかみ合わなかった」と続けた。逆境でこそ生まれるなでしこらしさ。中途半端な雰囲気に指揮官、選手の闘争心もトーンダウンしてしまったのかもしれない。

 4大会連続の五輪出場が絶望的となった4日の中国戦後。VIP席にいた協会関係者には危機感が全くなかったという。その様子を見たなでしこリーグ関係者は「何で笑っていられるんだ」とあきれたという。現場と協会には明らかな温度差があった。

 「女子サッカーをブームではなく文化に」。そう訴えた宮間も「与えられた活動の中でやるしかない」と常々言う。当事者意識のない協会に放置されたなでしこの花は枯れた。19年W杯フランス大会、そして20年東京五輪へ向け、協会のかじ取りも試される。 (特別取材班)

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2016年3月14日のニュース