なでしこの不協和音 不遇を知らぬ若手、まるで芸能人…“勘違い変装”

[ 2016年3月9日 10:09 ]

ベトナム戦の試合後サポーターにあいさつする、なでしこイレブン

【なでしこ落日(2)】

 昨季限りで現役引退した澤穂希さんがあきれ顔で明かしたことがあった。集合場所に、若手の一人がまるで芸能人のように変装して現れた。「私や川澄だってそのままなのに…」。その先の言葉はのみ込んだが、勘違いは何もその選手に限ったことではない。

 契約メーカーの担当者は、複数の若手選手から、欲しいスパイクの写真が添付されただけのメールを送りつけられたことがある。「やってもらって当たり前。礼儀を知らなすぎる」とあぜんとしたという。澤さん、FW大野ら数人を除き、W杯優勝メンバーでさえ、メーカーと契約を結んだのは11年以降。「今でも契約金をもらい契約している人は少ない」(関係者)のが現状だ。

 仕事とサッカーの両立に苦しんだ人もいれば、プロ契約を打ち切られた人もいた。どんな逆境でも諦めない「なでしこらしさ」は決して恵まれているとはいえない土壌から生まれた。

 突如訪れた、なでしこブームはその潮目を変えた。スパイクにしろ、練習環境にしろ恩恵を受けた一方、ファンの共感を得る謙虚さは確実に失われた。それが生活にもプレーにも如実に表れたのが、不遇の時代を知らない若い世代だった。

 だが若い選手には酷な面もあった。世界一に立ったなでしこのサッカーは約束事が多い上に、何年も同じメンバーで時間をかけ、つくり上げたもの。1度の合宿に呼ばれたぐらいで習得できるものではない。ましてや、11年以降、どんな大会でもテレビ中継され結果も求められた。世代交代という命題に取り組んでいた佐々木監督は、3世代合同合宿という斬新な取り組みをし、積極的に若手を招集したが、じっくりと育てる時間も余裕もなかった。

 結果、12年ロンドン五輪直後に日本で開催されたU―20W杯の銅メダルメンバーは今回、横山しか選ばれなかった。他国の平均年齢にあたる24歳前後はまさにその世代。彼女らの停滞が、日本協会の大仁会長が「このチームは古い」と斬り捨てる要因になった。(特別取材班)

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