×

東京V GK2人が背番号55で登場、天国の仲間と熱い戦い始まる

[ 2016年2月28日 18:47 ]

ウォーミングアップのため背番号55のユニホームでピッチに出た東京VのGK(東京ヴェルディ提供)

明治安田生命J2第1節 東京V1―0札幌

(2月28日 味スタ)
 明治安田生命J2リーグは28日、各地で開幕。14年シーズンの20位から昨季8位に躍進した東京Vは、ホームの味の素スタジアムに札幌を迎え、1―0で勝って9年ぶり昇格へ向けて好スタートを切った。

 2012年以来4年ぶりとなる開幕戦勝利。J2横浜FC時代の13年以来3年ぶりとなる開幕スタメンを完封勝利で飾ったGK柴崎貴広(33)は、これまで以上に固い決意をもってスタジアムに足を踏み入れていた。

 午後1時のキックオフを45分後に控えた頃だ。ウォーミングアップのため、柴崎とサブGK太田岳志(25)は、フィールドプレーヤーよりもひと足早くピッチに姿を見せた。2人のユニホームについた背番号はともに「55」。昨年8月21日に脳腫瘍のため10歳で亡くなり、東京Vが今季からスタートさせたファン・サポーターが選手になれる商品「VERS(ヴェルズ)」(Verdy Expanded Roster System)により加入した岩田和磨くんの背番号が刻まれた、黄色いGK用ユニホームでの登場だった。

 今年1月17日に行われた「VERS」の契約調印式には、最大25万円を支払って商品を購入し、チームの一員となった25人のうち19選手が参加。その1人が和磨くんだった。息子の代わりに出席した父親(48)が代理で契約書にサイン。あどけない笑顔を浮かべる和磨くんの遺影に背番号55のついたユニホームを着せて檀上に立った男性が「このたび、おそらく日本で最年少のプロサッカー選手になると思います。岩田和磨です。こういう形になってしまいましたが、10歳です。ゴールキーパーをずっとやっています。今回夢であったプロサッカー選手になれたということで、ぜひ、自分がゴールキーパーとして相手のゴールを止めるというつもりで、一緒に戦っていきたいと思います。空からですが、ぜひ頑張りたいと思います」と挨拶すると、壇上で並んでいた冨樫剛一監督(44)や羽生英之社長(51)が目頭を熱くし、会場にいた誰もが和磨くんの活躍を強く祈った。

 調印式から一夜明けた1月18日には羽生社長から選手たちに話があり、その後は和磨くんを「GK仲間」と呼ぶ柴崎が開幕戦に向けて関係者と話し合いを重ね、一緒に戦うという意味を込めて55番のGK用ユニホームを用意。2人のGKがウォーミングアップで着用し、そのうちの1枚は90分間ベンチの中にかけられた。

 柴崎は言う。「一緒に戦うつもりで…昨日の練習からずっと一緒にいるような感じで、力になってくれるんじゃないかなって気がしていました。(試合中)ちょっと攻められたりして、フッとした時にベンチを見るとユニホームが飾ってあって、心強くていつも以上のプレーができた。ずっとプレシーズンは良くなかったので、勝って、無失点で終われたので、和磨くんも喜んでくれているんじゃないかと思います」。

 自身にも、サッカーを始めたばかりの3歳になる息子がおり、開幕戦では一緒に入場した。和磨くんへの思いとともに、10歳の息子を亡くしたご両親への思いも強い。「今年は、息子が試合に出ていると思って一緒に戦ってほしいと思います。息子さんが亡くなって、月日が経ったからって切り替えることなんてできないと思うし、ずっと引きずるけど、自分たちのプレーで、前向きに踏ん張っているんだと思ってもらえたらうれしいと思います」。そう言うと、柴崎は口を真一文字に結んだ。

 サポーターも横断幕を用意。試合前、和磨くんがVERSの仲間とともに大型ビジョンで紹介されると、「天国の仲間たちの為にも良いシーズンを!」と大きく書かれた文字をスタンドに掲げ、和磨コールが何度もスタジアムに響き渡った。J1開幕から1日遅れて、今年もいろいろな人々の思いをのせて熱き戦いが始まった。

続きを表示

この記事のフォト

2016年2月28日のニュース