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引退した鈴木が最後に語った 浦和に欠けていたものとは…

[ 2016年1月5日 09:00 ]

<浦和・G大阪>G大阪に敗れ阿部と話す浦和・ペトロヴィッチ監督

 浦和一筋16年を貫いた元日本代表MF鈴木が、元日の天皇杯決勝をもって現役引退した。その前日の15年12月31日。浦和を支え続けてきたダイナモは、大一番で宿敵G大阪と対戦する心得について印象的なコメントを残していた。

 「オシムさんが言っていた言葉に“知恵と勇気”というものがあった。ミーティングで言われたことがある。凄く重要なことだと思う」。06~07年に日本代表を率いた名将の教え。オシムジャパン全試合に先発出場を果たした“水を運ぶ人”だからこそ説得力のある助言だった。

 「(G大阪は)勝負のポイントをみんな分かっている。うちは大事なところで勝てていない」。直近の対戦となったJリーグ・チャンピオンシップ準決勝では、延長後半に2失点を喫して敗北。優勝に王手をかけた14年のリーグ終盤では直接対決で黒星を喫し、タイトルをかっさらわれた。15年4度の対戦で1勝3敗と大きく負け越し。浦和の多くの選手が「G大阪は試合巧者」と話したが、そのG大阪が持つ強さは過去の経験から得た豊富な知恵ではないか。

 天皇杯決勝。1―1の後半8分にG大阪は遠藤の右CKをパトリックが右足で合わせる決勝点を挙げた。パトリックのマークについた槙野が、今野のスクリーンプレーで弾かれ、パトリックをフリーにさせてしまった。一人一人の守備が悪い訳ではなく、浦和は練習でセットプレーの守備に多くの時間を割いていない。G大阪には相手の弱さを瞬時に見抜く「知恵」と、大舞台でスクリーンプレーを成功させる「勇気」があった。あの得点の瞬間、鈴木の言葉が思い浮かんだ。

 槙野が右手を大ケガしながらもピッチに立ち続けたように、浦和からはタイトルを狙う「勇気」をひしひしと感じる。だが、屈辱の経験を経て獲得した浦和にしかない「知恵」を感じた瞬間は多くはない。ユニホームを脱いだ鈴木が最後に語った“オシムの言葉”。「知恵と勇気」が絶妙なタイミングで合わさった時、浦和のタイトルの道が開かれる。(大和 弘明)

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2016年1月5日のニュース