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FC東京・橋本の持つ“日本人が持っていない特徴”と武藤との共通点

[ 2015年12月19日 08:30 ]

今年4月、武藤(右)とランニングするFC東京の橋本拳人

 若手選手の成長過程を見届けるのは、サッカーに限らず、記者として楽しみの一つだと言えるだろう。それこそ“目を付けた選手”が徐々に成長を遂げ、ブレークし、さらにその後に代表にまで登りつめようものなら、その喜びも倍増だ。今、個人的に楽しみなのが、今季FC東京で著しい成長を遂げたMF橋本拳人(22)だ。

 橋本はJ2熊本での約2年の武者修行を終え、今季初めにFC東京に復帰。序盤こそなかなかチャンスは巡ってこなかったが、与えられた短い時間でアピールを続け、徐々に出場時間を延ばしていくと、最終的にはインサイドハーフのレギュラーポジションを獲得した。

 その特徴は何と言っても、めったに当たり負けしない強靭(きょうじん)なフィジカル。一見細身だが、軸のブレない生まれ持った体の強さが、彼にはある。右足から放たれるシュートも強烈だ。

 今季限りで退団するフィッカデンティ監督の右腕としてチームを支えたブルーノ・コンカ氏も、橋本の潜在能に早くから注目していた一人。今では「中盤のポジションで、彼は他の日本人がほとんど持っていない特徴を有している」と惜しみない称賛を送るほど。

 では、他の選手にはない特徴とは何か。コンカ氏は「彼は縦への意識が強く、常に(DFラインの)裏のスペースを攻めることができる。他の日本人にはなかなかない特徴。しかも彼は恐れを知らないから、(裏に)行くと決めたら行く。しかもフィジカルが強いから、相手にとって止めるのは難しい。また飛び出すタイミングは天性のものがある」と指摘。そのことで「多くのゴールを決められるし、フィジカルも強いから頭でも、足でもゴールを狙える能力があるんだ」と分析した。

 実際、橋本は熊本でDF起用されていたこともあり、FC東京に復帰した当初、自らが持つその最大の武器を認識できていなかったようだ。それでもコンカ氏の練習後のちょっとしたアドバイスで、その特徴に気付かされ、試合でも徐々に実践できるようになったという。

 まだ22歳で伸び盛り。では今後、さらに成長するためには何が必要か?再びコンカ氏に聞くと「ボールを持った時のパスのタイミング。そして攻撃時の、ピッチのポジションニングだ」と指摘。例えば、相手が自陣で守備を固めてきた場面。「パスをつないだり、パスをつなぎながら飛び出していくタイミングを計ったり、さらにプレーの幅を広げられることができれば、彼はもっと素晴らしい選手になる」と断言した。

 そしてコンカ氏は意外にも、似た特徴を持った選手として、今夏にFC東京からマインツへ移籍した武藤の名前を挙げた。「武藤も最初は良いプレーをするには、スペースが必要だった。だけど、相手DFを背にしたときにどうやってボールを止めるのか、どうやって反転するのかを覚え、最終的にはスペースのない試合でも活躍できるようになった。その点で、拳人は武藤と似ている。彼は武藤同様に人の話に良く耳を傾ける。だから言われたこともすぐに実践して、修正することができる」。

 くしくも、来季、攻撃戦術として人もボールも動くムービングフットボールを展開する城福氏が指揮官に就任する。攻撃面でさらなるレベルアップを目指す橋本にとっては、まさに打ってつけの監督。来季のさらなる成長が今から楽しみだ。(垣内 一之)

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2015年12月19日のニュース