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試合中に爆発音 フランスW杯競技場で“悪夢の一夜”

[ 2015年11月15日 10:20 ]

親善試合が行われていたパリ郊外のサッカー場のグラウンドに降りた大勢の観客(AP)

 パリ中心部の劇場や郊外の競技場近くなど6カ所で13日午後9時(日本時間14日午前5時)すぎ、ほぼ同時に乱射や爆発が起き、少なくとも市民ら128人が死亡、約250人が負傷した。爆発があった競技場でスポニチ本紙通信員も“恐怖の一夜”を体験した。

 それは試合開始後17分だった。突然のごう音。次いで第2のごう音。記者たちは顔を見合わせた。サッカーのクラブチームの試合ではサポーターが爆竹を使うが、この日はフランス―ドイツの親善試合。ましてや競技場は98年W杯フランス大会のメーン会場、スタッド・ド・フランス。オランド大統領も観戦していた。

 爆竹にしては光も煙も見えないと不可解に思ったが、ちょうど退屈な試合展開になっていたため「おっと、目が覚めた」と思った。その時、スタジアムが厳重警備で包囲され、完全封鎖されていたとは全く想像できなかった。

 昨年のW杯王者相手にフランスが2―0で勝利し、記者会見場に向かう準備をしていると、場内アナウンスが響いた。「アクシデントが起きた関係で、皆さん南出口から退出してください」。その時だ。報道陣出入り口に、突然サポーターの一群が押し寄せ、「みんな階段を上がれ!上がれ!」と怒号が響いた。「武装した男がウロウロしている!」の声も飛んだ。

 事態を把握できたのはその直後。家族に電話すると、「スタッド・ド・フランス周辺で自爆テロがあった」の答えが返ってきた。

 記者会見は中止。何百人もの観客が避難するため、スタンドからピッチに駆けだしていた。ほんの数十分前まで、両国の代表が走っていたグラウンドを、今度は何百人もの観客が出口を探して走り回っていた。異様な光景だった。

 約8万人の観客は、たった一つの出口へ急いだ。1時間30分ほどかけてスタジアムから出ると、警察車両と警官隊が道路を封鎖していた。駅では、電車は止まったまま動かず、ついには全員下車の指令が出た。

 何とかパリに到着。車のラジオをつけて、事態の大きさに凍りついた。犯人たちは、試合終了後に8万人の観衆が出てきたときに自爆することを計画していたという。それが、最初の自爆が何らかの原因で予定より早く起こってしまい、それに呼応して別の実行犯も自爆したらしい。

 もし試合を慌てて中止して、観衆を外に避難させていたら、大惨劇が起きていたかもしれない。私も無事だったかどうか――。帰宅しテレビのニュースを見て、また背筋が寒くなった。(パリ・結城麻里通信員)

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