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ACL広州恒大戦 柏の完敗は日本サッカー界への警鐘

[ 2015年8月31日 09:20 ]

柏戦を前に会見するフェリペ監督(左)とジョン・ジー

 “金持ち”の余裕を感じた。8月24日に日立柏サッカー場で行われたACL準々決勝第1戦、柏―広州恒大戦の前夜の公式会見。本来ならピリピリムードの漂う状況で、広州恒大のフェリペ監督は「最後にこれだけは言わせてほしい」と切り出した。

 「私が過去に監督を務めたジュビロ磐田にハグをしたい。アラタ、ツジ、ナナミ、フジタ、ナカヤマ…。彼らの幸運をお祈りしたい」。97年に指揮した古巣の当時のフロント、選手の名前を列挙して、感謝の気持ちを伝えた。翌25日の試合では敵地で柏に3―1で快勝。前半は柏に1本のシュートも打たせないなど盤石の試合運びだった。

 広州恒大は中国Cリーグ4連覇中の強豪で、ブラジル代表経験のあるMFパウリーニョ、FWロビーニョらが在籍。中国の大手不動産会社を親会社に持つ金満クラブとして知られる。ACLで来日していた中国人記者によると、勝利給は普段のリーグ戦で300万円、ACLやクラブW杯の大一番では1000万円超もあるという。

 育成にも力を入れており、広州郊外に拠点を置くアカデミーには小学生から高校生までの約3000人の生徒が所属。広大な敷地にはピッチ50面、学校、宿泊施設、スタジアムに加え、大型スーパーや映画館まで備えられている。指導に当たるのはレアル・マドリードから招へいしたコーチ陣で、これ以上ない環境。柏を撃破した試合では外国人の圧倒的な個の能力もさることながら、若手中国人選手のレベルアップも目を引いた。

 一方のJリーグは育成面でも苦戦が続く。高円宮杯プレミアリーグなどユース世代の大会は整備されたが、プロで出場機会の少ない19~23歳の世代の伸び悩みは深刻。Jクラブはサテライトリーグの復活などを検討しているが、各クラブの資金不足により実現は難しいのが現状だ。生え抜き選手の多いJ屈指の育成型クラブである柏がホームで完敗したことは、日本サッカー界への警鐘に他ならない。W杯や五輪の連続出場が途切れる前に、外資参入の大幅な規制緩和や企業名露出など、金脈にたどり着く何らかの策を打ち出す必要がある。(木本 新也)

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2015年8月31日のニュース