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有吉ブレークの陰に近賀あり「本気でこいつには託したい」

[ 2015年7月31日 10:50 ]

なでしこジャパンの近賀(右)。左は鮫島

 W杯準優勝を果たしたなでしこジャパン。快進撃の裏には、初の国際舞台ながら最優秀選手候補にまでノミネートされた右サイドバック有吉(日テレ)の活躍抜きには語れない。豊富な運動量を支えに、攻守に顔を出す。決勝トーナメント1回戦のオランダ戦では、代表初ゴールとなる先制点を叩き込むなど存在感は際立った。

 だが、裏方に徹した選手の存在があった。それが有吉から定位置を奪われた形となったDF近賀(INAC神戸)だった。有吉が中学時代から憧れていた先輩だ。大会中、ホテルでの守備陣のミーティングでは「近賀さん、福元さん主体にやってくれた」と有吉は言う。なでしこでのキャップ数90試合を超える近賀は国際大会の経験が豊富。14年はアーセナル(イングランド)に所属するなど、世界中のサッカーにも精通している。「対戦相手の情報を共有させてもらった」と有吉。得点を決めたオランダ、準決勝で撃破したイングランド、決勝の米国など相手の特長を有吉に教え、練習での紅白戦では気がついた点を全て有吉に伝えたという。試合中もベンチから有吉に声を掛け、的確なアドバイスに「安心だった」と有吉は振り返った。

 決勝の米国戦後。わずか1試合の出場にとどまった近賀は、せきを切ったように号泣した。「自分にとっては、悔しいけど。本気でこいつに託したいなって思った。だから最後まで…」。必死に言葉を絞り出し、その思いを語った。有吉は「近賀さんの分も頑張らないといけなかった。思いを背負う責任があった。サブに回っても、いい雰囲気をつくって支えてくれた。心強い先輩がいたから、思いっきりプレーができた」と言う。先輩の背中を見て、後輩が育つ。こうして、なでしこの伝統は続いていく。 (大和 弘明)

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2015年7月31日のニュース