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なでしこブームを文化にするために…有吉両立を「美談にしてはダメ」

[ 2015年7月9日 13:15 ]

W杯決勝トーナメント1回戦のオランダ戦で勝利し、ファンにサインするなでしこジャパンのDF有吉

 女子W杯カナダ大会で米国との決勝戦を控え、なでしこジャパンの宮間は言った。「女子サッカーをブームではなく文化にしたい」と。前回大会後に日本中に巻き起こったなでしこブーム。だが12年ロンドン五輪を境に以前ほどの盛り上がりはなくなった。冒頭の発言は現状を痛感している宮間の本音だ。

 11年以前から全員が実質プロ選手だったINAC神戸は神戸市のバックアップもあり練習場所を確保。宮間も12年からプロ契約を締結するなど世界一を機に変わった側面もあるが、大半の選手は仕事と両立しているアマチュア。いまだに練習場所を求め各地を転々としたり、プロ選手と言いながら無給の元代表選手もいたりするのが女子サッカーの現実だ。INAC神戸の文弘宣会長は「DF有吉が仕事と両立していることを美談に仕立てているようではダメ。本当に世界一を目指すなら、全員とは言わないがチームは数人のプロ選手を抱えるべき」と訴える。これまでも協会やリーグ側へ何度も改革を提言してきたというが「代表が以前に比べて少しは利益が出るようになったのに、協会やリーグは何も変わらない」と嘆く。

 だが、外に目を向けても女子の世界は厳しい。日本同様アマチュア選手も多く、練習が週3、4日という海外クラブもある。日本協会は海外の主要リーグでプレーする選手を支援する「海外強化指定選手制度」を10年から実施。支度金のほか、滞在費1万円を支給している。熊谷、岩渕ら海外でもまれ成長した選手もいる一方、現実を知り撤退を余儀なくされた選手も多い。また、国内リーグの空洞化にもつながるとし「リーグも成熟していないのになぜ海外に行く選手を支援するのか」と疑問を投げかける関係者もいる。ブームを文化にするには、足元の国内リーグから見つめ直す必要がある。(特別取材班)

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2015年7月9日のニュース